【MBA留学体験記】香港科技大学(HKUST) 童 心<2019年入学>

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プロフィール

童 心(どう しん)

中国生まれ、日本育ち。上智大学法学部を卒業後、日系メーカーに入社。ルートセールスとして都内大手ドラッグチャネルのインバウンド店を20店舗ほど担当。通常のルート営業業務のほか中国語を活かし、①インバウンド向けのクロスボーダーマーケティング業務、②美容職スタッフと通訳スタッフのマネジメント業務も行った。受験時入社4年目。2019年7月より人事部へ異動し、HKUSTへ留学を開始。香港ローカルのスタートアップ企業でインターンを行い、2021年度春よりYale大学へ交換留学を予定している。Email : sdo@connect.ust.hk

なぜMBAを取得しようと思ったか

焦燥感です。営業活動のサブ業務として日本国内からインバウンド関係のクロスボーダー業務に携わるなかで、①自分のビジネスパーソンとしての俯瞰力不足、②デジタル化を中心とした世界の変化に乗り切れていないことへ漠然とした焦りがありました。例えば、戦略の立て方です。クロスボーダー業務で中国マーケットの現状を独自に分析し、上司に共有をしていました。しかし「だから何が起こりそうで我々は何をすべきか」の一番重要な部分がいつも弱いという悶々とした気持ちがありました。また、当時定期的に上海に行っていたのですが、財布を出した際「今時財布を持ち歩くなんて遅れてる笑」と親世代の知人に言われ衝撃を受けました。こうしたことが積み重なり、改めてビジネスのルールを学びたい、自身の国際競争力を上げなければ間に合わなくなるという衝動に駆られ、MBAの受験を検討しました。

MBAの最大の利点は決断力が身に着くことだと思います。ファイナンス、ストラテジー、マーケティングなど様々なことを学びますが、それらはあくまで意思決定をするためのツールであり、MBAはそれらを用いて決断の訓練を行う場です。『あなたならこの状況をどう分析し、どのような決断を下すか、それはなぜか』ということをひたすら行います。不完全な情報を元にフレームワークを使って分析し、その時に出来得る最善の決断を下す力は経営者になるにせよ、経営者をサポートする立場になるにせよビジネスパーソンとしてとても大事だと思っています。また、その決断を伝播させる手段として、日本が遅れている分野であり今後避けては通れないデジタルというアプローチを中心に学ぶには、海外のMBAが最適であると考えました。

上海やシンガポールに企業訪問_HKUST_童
上海やシンガポールに企業訪問

アジアMBAを選んだ理由

①自分の強みがアジアにあった点、②アジアが魅力的な市場である点から将来的にアジアを軸としたビジネスプロフェッショナルになりたいと思っていたためです。そのためにはアジアのMBAを選択した方が、取り扱われるケースのアジアビジネスとの関連性や卒業後の人脈という意味でメリットがあると感じました。

強みがアジアにあること

なんちゃって中国要素があるものの、ほぼ日本で育ち、入社後も国内マーケットを担当していました。すでに自分の中にある“日本”という強みを足掛かりに、より強みを盤石化させるには欧米を齧るよりアジアに関してより深く勉強する方が良いと考えました。例えば商品のマーケットエントリーをする際、有利に勝負を進めるためには自社の強みが活かせる市場で戦いますよね。ただマーケットに参入するだけでなく、その先で勝ちたい、リードしたい場合、やはり強みを伸ばしてその強みを活かせる分野で勝負すべきと考えました。

アジアという巨大市場

なにをもって巨大市場とするかは人によって異なると思いますが、私の場合は人の数です。もともと多くの人のQOLを向上させたいという想いからメーカーで働いていました。アジア地域には世界人口の半分以上が生活しています。自分の強みもアジアである以上このマーケットを捨てる手はないとごく自然に思っていました。

アジアMBAのトップスクールといえばシンガポール、中国、香港が上がりますが、その中でも香港を志望したのは中国というアジアの巨大マーケットを適度な距離感で学びたかったからです。シンガポールは取り扱われるケースなどの色として東南アジアに比重を置いています。中国本土も考えましたが、“アジア”というよりも中国色が強くなりすぎてしまうことを懸念し、私は香港を選択しました。

アジア市場でリアルに起きていることが感じられる、写真はデモ活動で中国大陸クラスメイトが帰国しリモートでディスカッションした様子_HKUST_童
アジア市場でリアルに起きていることが感じられる、写真はデモ活動で中国大陸クラスメイトが帰国しリモートでディスカッションした様子

 実際入ってみてどうだったか

HKUST を選択したことは大正解でした。私はMBA にアプライする際、実学精神をとても重視していました。HKUSTは中華圏の中でも一番欧米のMBAに近いプログラムの組み方になっています。授業もただ講義を受けるだけではなく毎度ケーススタディやグループワークが課され、アウトプット力も鍛えられます。

例えば、EPS(Enhancing Professional Skills)という授業では1週間朝9時から夜22時まで、Marketing / Finance / Strategyなど多岐にわたる分野から、各々名物教授が手を組んで、提案力やプレゼン構成を鍛えてくれます。約10分程度のプレゼンを作成し、最初の1分間だけをクラスメイトの前で発表してひたすらフィードバックを受けるなどしました。よくMarketingの授業で発表するプレゼンはMarketingの授業を意識し、Financeの授業でのアウトプットはFinanceの授業で習ったことを中心に考えてしまいがちですが、実際のビジネスでも特定の視点に偏り過ぎない「総合力」が求められるのではないでしょうか。

このEPSの授業で鍛えられたため、アメリカで行われたケースコンペでも入賞することができました。EPSだけでなく、HKUSTの授業は実際にビジネスの最前線で活躍してきた教授が教鞭をとっていたり、企業の役員と協力して生徒に企業幹部の前で最終プレゼンを行わせたりと、リアルの世界が非常に意識されています。

米・印・韓のクラスメイトとUSC主催のCase Competitionに参加_HKUST_童
米・印・韓のクラスメイトとUSC主催のCase Competitionに参加
Case Competitionの授賞式_HKUST_童
Case Competitionの授賞式
教授とお疲れ様会_HKUST_童
教授とお疲れ様会

クラスの多様性

HKUSTは学生の国籍や思想、バックグラウンドに大きな偏りがないように意識されています。各々大切にする価値観が違うので、“ビジネス”という観点に特化してよりディープな討論ができます。

例えば国家安全法が施行される前、香港でデモ活動がまだ盛んに行われていた頃、Management Consultingの授業でHK Political Strategy Recommendationというグループ課題が出ました。チーム毎に教授から、クライアントが①香港民主派の場合、②北京政府の場合と振り分けられ、授業で習ったツールを政治が絡んだ問題にどう当てはめるかを考えました。私のグループは中・台・香・韓・日の5名で構成されており議論はなかなか紛糾しました。

実際のビジネスでも様々な場面で、個人的な信念とは別にビジネスマンとしての客観的な判断を下さなければならないことがあります。ここまで現実に即してディープに討論するMBAはなかなかないのではないでしょうか。

クラスメイトと寮内でパーティー_HKUST_童
クラスメイトと寮内でパーティー
米・印・韓・台のクラスメイトと見たアメリカ大統領選_HKUST_童
米・印・韓・台のクラスメイトと見たアメリカ大統領選

MBAのスケジュールとインターン

HKUSTのプログラムは12ヵ月か16ヵ月で終了します。8月から始まり、早期卒業を目指す人は多めに単位を取り、翌年の7月から仕事を再開しています。大半は、夏休みに現地でインターンを行い、その後約3か月、USTが提携している他国のTOP MBAスクールに交換留学し、16か月で終了します。欧米のTOP MBAにもアジアMBAの学費で交換留学が出来るのはオトクですよね(笑)。もちろん枠数はありますがUSTは提携校が多く、感覚として私も含めて殆どのクラスメイトが第3志望校までの大学に交換留学先が決まりました。

12ヵ月制か16ヵ月制かを就職状況などに応じて柔軟に調整できるのもメリットです。単位の取り方と交換留学に行くか次第なので入学時点で決める必要はありません。

私は16ヵ月制を選択し、夏にインターンを経験しました。インターンを探す際、アルムナイの方々に本当に助けられました。私の代は入学当初より香港のデモ活動やコロナと比較的大変な年でした。イベントが急遽中止になっていくなか、インターンに関して初めましての先輩にご連絡をした際は「アルムナイは使ってなんぼなんだからじゃんじゃん使って(笑)」とよく言っていただきました。初めましてで、です。ありがたいとともにこんな人に私もなりたいと思いました。結局、私は日本人アルムナイにご紹介いただいた初見のインド人アルムナイが働く香港ローカルのスタートアップ企業でインターンをしました。インターン内容はマーケットエントリー(海外市場)の戦略立案です。国内営業しか経験のなかった私がこのような機会に恵まれたのは、まさしくMBAのおかげです。

MBAは大学によってカラーがあり、HKUST MBAは比較的Competitiveだと言われています。いい意味でその通りだと思っています。歴史がまだ浅いからこそ、自分たちの今後の活躍がHKUST MBAの評判を左右するんだという当事者意識が強くCompetitiveであると同時にSupportiveであり、相乗効果で高め合おうというムードが色濃くあります。

卒業生との交流会_HKUST_童
卒業生との交流会

※参考:現時点で取得し終えた授業

hkust_体験記_童_現時点で取得し終えた授業

最後に

長々とした拙文を読んでいただきありがとうございます。受験生活は大変なことも多いかと思います。私も何度も諦めようとしました。今振り返ると、当時諦めなかった自分とHKUST MBAを選んだ自分に本当に感謝です。まだ在校生ですが、HKUST MBAでの生活はそれほど充実したものでした。

これからは間違いなくアジアの時代です。MBAと言えば欧米というイメージは未だにあるかと思いますが、是非その固定観念に捕らわれずに一度ご自身のやりたいこと、フィット性から志望校を考えてみてください。もしアジアMBAも候補に入るようであれば、ご連絡をいただければ微力ながら是非お手伝いをさせていただければと思います。

お目通しありがとうございました!

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