【MBA留学体験記】香港科技大学(HKUST) 砂田 涼平 <2022年入学> 後編

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プロフィール

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砂田 涼平 (すなだ りょうへい)

香港科技大学(HKUST)フルタイムMBA Intake2022

  • 早稲田大学商学部卒業
  • 2013年より三井住友海上火災保険株式会社に入社。人事、法人営業、タイ駐在を経て退職、2022年8月よりHKUSTへ私費留学
  • HKUST MBA Intake 2022、ジャパンクラブ代表
  • HKUSTの交換留学制度を利用し、スペインのIEへ3ヶ月留学

私のMBAライフ

ここでは、前編のプログラムで紹介した内容をもう少し具体的に、私がどのようにHKUSTのMBAを過ごしてきたのか、赤裸々に5つの期間に分けて紹介します。MBA期間のおおまかな概要は前編をご参照ください。

1年目の8月

8月上旬からプレタームが始まるため多くの学生は7月中に渡航をします。当時は退職(厳密には有給期間)してニート状態だったので、日本で毎日毎晩飲み歩いたのちに7月下旬には香港に渡航しました。一方で当時はコロナの隔離があり、隔離施設が予約できないと渡航できない状況で、一部の学生は母国からオンラインでプレタームに参加していました。

クラスオリエンテーションでは、初めてクラスメイトと顔合わせを行い、これから始まるMBA生活に胸を躍らせていました。また時間に比較的余裕があるので、日本人クラスメイトと協力してたこ焼きパーティやボートパーティなどを開催して、クラスメイトとの交流機会を作っていました。

そしてこのプレタームでオーシャンパークのケースコンペが開かれました。初めてのグループワーク、初めてのグループプレゼン、英語が全くついていけずに私は一切何も発言できない地蔵と化し、MBAの洗礼を浴びた経験となりました。この最初のイベントでクラスメイトの実力が図られ、「誰が優秀だ」などのレピュテーションが醸成され、今後グループを作る際に大いに影響してきます。私は、「夜(飲み会)は元気だけどミーティングで一切発言しない日本人」というレッテルを貼られてしまったのではないかと非常に焦り、スタートダッシュが遅れたことを痛感するのでした。特に、自分より若い人たちと比べて何も貢献できないことは、言葉にできないほどの悔しさを感じました。

たこ焼きパーティ_HKUST_砂川
たこ焼きパーティ

1年目の9月〜12月

8月中でプレタームを終え、9月から本格的にMBAのプログラムが始まりました。プレターム中とは打って変わって、授業が始まり、スクール主催のキャリアイベントや特別講義(単位にはならないが、希望者はファイナンシャルモデリングなどを学ぶことができる講義など)が毎週開催され、クラスメイトにとって最も多忙な時期となりました。加えて、香港での就職を考えている学生は学外のイベントにも積極的に参加し、ネットワークを築きながら就職活動を開始していました。私は香港就職にも興味があったものの、授業で精一杯で就職活動なんて一切できず、毎週の数少ないオフの日も図書館にこもって予習復習の日々を送っていました。

この時期のグループワークで特に思い出深いのはマーケティングでした。最もタフなコア授業の一つで、毎週の授業でマーケティングで学んだ知識を反映しながらゲームシミュレーション内の売上を競うグループワークがあります。フランス人、ドイツ人、南アフリカ人、カナダ人、日本人の多国籍そして自分以外は全員女性というグループに入ることになり、他のクラスメイトからは「あんたはなんでそのグループに入ったの?笑」と笑われる始末でした。そもそも英語に四苦八苦しているのに、トップクラスに優秀な彼女たちから要求されるグループ課題のクオリティの高さや女子特有の会話についていくのに必死で、非常に苦労したのは今となっては良い思い出です。下手なアウトプットを出さないよう、慌ててグロービスのマーケティングの教科書を読み漁り、徹夜でグループワーク課題をこなしたりしていました。そうした甲斐もあり、相変わらずアウトプットも英語もプアだったかもしれないですが、彼女たちと熱い友情(?)を築き、クラスの男子の中では私が彼女たちと最も親しい関係(?)になれたと自負しています。

マーケティングのグループ+教授_HKUST_砂川
マーケティングのグループ+教授

またこの時期の9月にはクラス代表の選出やクラブの立ち上げが行われ、私の代では日本人クラスメイトの遠藤さんがクラス代表を務めました(歴代で日本人初!)。詳細は彼の【MBA在校生レポート】をご参照ください。

私はジャパンクラブを立ち上げ、何とか選挙で選んでもらい、日本文化を知ってもらう様々なイベント(寿司パーティや餅パーティなど、とにかくパーティ三昧)を行いました。特に、夏休みの6月に開催したクラスメイトと日本を旅行するジャパントレックが最大のイベントでした。ジャパントレックについては後述します。

ジャパンクラブ主催の寿司パーティ_HKUST_砂川
ジャパンクラブ主催の寿司パーティ
クラス代表の遠藤さん主催のハロウィンパーティ_HKUST_砂川
クラス代表の遠藤さん主催のハロウィンパーティ

そして12月には名物の一つであるインターナルケースコンペが開かれました。うまく多国籍かつバランス良いバックグラウンド(ファッションデザイナー、IT、ファイナンス、マーケティング)の4人を集め、上位入賞を果たすことができ、スクールからの費用補助のもと海外のケースコンペへの参加権を獲得し、6月にハワイのコンペに参加してきました。ハワイのコンペについては後述します

12月の下旬からようやく冬季休暇に入り、日本人とインド人のクラスメイトを連れて駐在時の故郷であるタイへの旅行を開催しました。ようやくハードな時期を乗り越え、思い切り楽しんできました。この9月〜12月は最もハードかもしれませんが、同時に最も充実していた気がします。

タイ旅行で訪れたヤオノイ島_HKUST_砂川
タイ旅行で訪れたヤオノイ島

1年目の1月〜4月

年明けからはHKUST名物プログラムのEPS(Enhancing Professional Skills)が始まります。インターナルケースコンペと同様に、自分でチームビルディングを行うことになります。グループワークにはビジネス全般の知識やスキル(マーケティング、ファイナンス、ITなど)が求められ、上手に多様なバックグラウンドのチームを作れるかが大きなポイントとなってきます。かつ、いくら個人として優秀な人たちばかり集めても、チームワークがないと乗り越えられない非常にタフなプログラムとなっています。実際に、全員優秀だけど各自の主張が強すぎて崩壊してしまったチームや、深夜に喧嘩の怒号が飛び交う場面を多く見てきました。この経験から、個人の優秀さはもちろん大事ですが、チームワークを築けるソーシャルスキルの重要性を肌で感じることができたのは良い経験でした。このEPSでは私のチームは上位入賞ができませんでしたが、他の日本人のチームが決勝プレゼンまで上り詰めました。

クラスメイトの仲村さんのEPS最終プレゼンの勇姿_HKUST_砂川
クラスメイトの仲村さんのEPS最終プレゼンの勇姿

このEPSが終わった後は、選択科目中心のプログラムとなり時間にも比較的余裕が出てきます。またこの時期にクラス代表の遠藤さんが企画したHKMBATが開催されました。詳細は遠藤さんの【MBA在校生レポート】をご参照ください。この時期は香港マラソンにクラスメイトと参加したり、香港の山にトレッキングに行ったり、クラス代表としての遠藤さん企画のイベントが目白押しでした。

私は3月から香港にあるコンサルティングファームでインターンを行なっていました。同時に非常にタフな選択科目を取ってしまったがために、インターンと授業の板挟みになるハードな時期で徹夜をすることも多々あり、4月は②1年目の9月〜12月の時期よりも忙しかったかもしれません。ただこの頃にはMBA最初の時期のようにグループワークで何も発言できないということは無くなり、拙い英語ながらもグループの議論をリードする場面も増え、少しだけ自信をつけ始めました。

ジャパンクラブ主催の正月の餅パーティ(キャンパスにあるバーベキュー場)_HKUST_砂川
ジャパンクラブ主催の正月の餅パーティ(キャンパスにあるバーベキュー場)

1年目の5月〜8月

ここでは、クラスメイトとの別れ、ジャパントレック、ハワイでのケースコンペに関する話になります。

6月から夏季休暇(夏季休暇中も一部授業は開講)に入るため、単位の取得状況によっては卒業してしまうクラスメイトや交換留学に行くクラスメイトが過半を占め、5月が実質的に最後のクラスメイトとの授業の機会となります。この頃には私もインターンをこなしながらも落ち着き始め、毎週毎日毎晩パーティをしていました。前編で述べたとおり、私はクラスメイトの韓国人とルームシェアをしており、キャンパスから近いところに住んでいたことから、我が家はクラスメイトの溜まり場みたいになり、鍋やたこ焼き、カレーや韓国料理パーティなどを開き、クラスメイトと最後の思い出作りに励んでいました。またスクール主催のガラパーティも開かれ、いよいよクラスメイトとの別れの時なんだと実感をします。

我が家の10畳程度のリビングに20名以上が押し寄せたパーティ。毎回掃除が大変_HKUST_砂川
我が家の10畳程度のリビングに20名以上が押し寄せたパーティ。毎回掃除が大変

そして6月に、クラスメイト約40人ほどを引き連れてジャパントレックを開催したことは、とても思い出深い経験となりました。少しでもクラスメイトの負担を減らすべくスポンサー探しに奔走したり、スクールから補助金を得るべく喧々諤々の交渉をしたり、スケジュール調整やコンテンツの検討など、非常に苦労しました。ですが日本人のチームワークもあり、無事に開催、そしてクラスメイトのみんなに感動してもらえるトレックを提供することができました。「今までの旅行で一番楽しかった!」と言ってくれる人も多く、私自身にとっても今までの人生で最も素晴らしい旅行であったかもしれません。六本木のクラブを梯子して回ったり、箱根の旅館で芸妓と戯れ、クラスメイトと最後の時を満喫しました。めちゃめちゃ楽しかったです、最後泣きました。

ジャパントレック箱根の宴会場_HKUST_砂川
ジャパントレック箱根の宴会場
ジャパントレックでのプリクラ文化の普及_HKUST_砂川
ジャパントレックでのプリクラ文化の普及

そして私はジャパントレックが終わってすぐそのまま、上記のインターナルケースコンペでお話しした通り、ハワイのケースコンペに参加してきました。なおこのグループも、山あり谷あり、毎回喧嘩をしながらも何とか乗り越えて、無事に優勝に辿り着き、かけがえのない友情を築くことができました。なお私は学校からの補助金をマカオのカジノで全額スってしまったので、実質自己負担で参加してきました(^ ^)

優勝時の写真、皆でお揃いのコスチュームでプレゼンしました_HKUST_砂川
優勝時の写真、皆でお揃いのコスチュームでプレゼンしました

その後は一旦香港に戻りインターンをこなしながら毎週日本から遊びに来る友人をアテンドしたりしながら過ごし、8月から日本の実家で過ごしながら交換留学に向けた準備をしていました。なお、夏休み中もHKUSTでは一部授業が開講されているため、香港に残っているクラスメイトは授業を取りながら就職活動やインターンに励んでいました。

2年目の9月〜12月

私は9月からスペインのマドリードにあるIEへ交換留学に行きました。IEを選んだ理由としては、HKUSTのMBA留学を通じてヨーロッパでも留学してみたいと思ったこと、IEから香港に交換留学に来ていた日本人がIEを強く推してきたこと、そしてIEがアントレに強いことが理由でした。就職活動が控えており、当初はそこまで乗り気ではなかったのですが、上述のIEからの交換留学で来ていた日本人の方と仲良くなり、IEの魅力(可愛い人が多い!が一番心惹かれた)を力説されて交換留学するに至り、約3ヶ月を過ごしてきました。

IEはスペインに位置することもあり、ラテン系を中心に非常にダイバーシティの富んだスクールでした。日本からの人気もあるため、日本人の学生も多く、香港だけでなくスペインでもネットワークを広げることができ、HKUSTとは違ったMBAライフを送れたことは非常に良い経験になりました。他にも色々ありますが、IEのことをたくさん書くとHKUSTではなくIEの志望者が増えてしまいそうなのでこの辺りで終わります。

マドリードでの交換留学の友人たちとのハロウィーンパーティ_HKUST_砂川
マドリードでの交換留学の友人たちとのハロウィーンパーティ

IEの交換留学終了後、ヨーロッパ、アフリカ、南米を3か月ほど周遊して日本に帰国、この体験談を執筆しています。

就職活動

多くの方が気になっているであろう就職活動についても少し記したいと思います。私自身は香港就職に興味があったものの、優秀なクラスメイトとの競争に勝てないと思い早々に断念しました。また授業や課外活動も忙しく、本格的に就活準備を始めたのは2年目の8月の夏休みから、面接を受け始めたのは交換留学が始まった9月からでした。MBA前はスタートアップに関心があったものの、戦略コンサルタントのキャリアを挟んでからスタートアップでの就職を検討しようと思い、外資系のコンサルティングファームの日本オフィスでの就職を目指していました。

HKUSTでは英文レジュメの添削サービスや、コーチングセッションなどのキャリア支援が充実しており、特にコーチングセッションでは戦略コンサルティングファームの出身者からケース面接の対策を受けることができ、有効活用していました。また前編で述べた通り卒業生の支援も厚く、私含めて多くのクラスメイトが卒業生からのサポートを活用しながら就職活動を行っています。

交換留学中の慣れない環境下での就職活動に加え、採用マーケットのハード化の影響もあり苦労しましたが、幸いなことに目標としていた戦略コンサルティングファームからオファーをもらうことができました。他の日本人クラスメイトも、香港やシンガポール、投資銀行や再エネ関連など、希望の地域・業界で無事に就職を果たすことができました。一方で日本人だけでなくクラス全体を見た場合、私よりも断然優秀であっても希望の職に就けない、または就職活動を続けているクラスメイトもおり、MBAだからといって職が簡単に見つかるわけではなく、MBAの就職活動が簡単ではないことをお伝えしておきます。

終わりに

書き始めると思い出がとめどなく溢れ、思い出の20%程度しか書けませんでしたが、このセクションで筆をおさめたいと思います。

先日、推薦状を書いてくれた前職の上司に挨拶をしてきました。「MBAどうだった?」と聞かれて、口をついて出た言葉が「今までの人生で最高の期間でした!!!」でした。

上述の通り最初の頃は何もできずに悔しい思いばかりしていましたが、MBAが終わる頃には拙い英語ながらも「如何に笑いをとるか」という観点で堂々とプレゼンするくらい成長したり、留学中の目標としていたグローバルな環境下でのリーダーシップ経験も積むことができました。写真を見るとパーティばかりしているように思われそうですが・・・

この寄稿文がどれくらいの方に読んでもらえるのか分かりませんが、少しでも多くの方にMBAの魅力を知ってもらい、またHKUSTに興味を持ってもらえるきっかけとなれば幸いです

長くなりましたが最後までご覧いただき、ありがとうございました。MBAに関してでも、HKUSTに関してでも、質問や相談などあればいつでもお気軽にご連絡ください。

HKUST MBA Intake 2022  砂田涼平 連絡先 LinkedIn

笑いを取れるようになった時のプレゼン_HKUST_砂川
笑いを取れるようになった時のプレゼン
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