【セミナーレポート】アジア現地で活躍する卒業生によるパネルディスカッション

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近年アメリカのビジネススクールへの進学者は減少している一方で、アジアMBAへの日本人進学者数は増加傾向です。その中でも卒業後もアジア現地で働きたいという方の割合が増えています。

そこで、“アジアMBA to アジアで働く”キャリアを歩む卒業生にお集まりいただき、「アジアMBA夏祭り2021の連動企画(主催:アゴス・ジャパン)」として「アジア現地で活躍する卒業生によるパネルディスカッション」を開催致しました。

本記事では当日のセミナーの様子をレポート記事としてお届けします。

目次

アジェンダ

アジアMBA夏祭り2021_パネルディスカッション_アジェンダ

登壇者

パネリスト

池田豊s

池田 豊さん 香港科技大学(HKUST)/Class of 2020

日系大手化粧品メーカー、香港在住

大学卒業後、証券会社でIPOアドバイザリー、日系電機メーカー香港地域統括会社の経営企画に従事。その後、2018年より、HKUST MBAに私費留学。卒業後、日本に帰国し、2020年より、日系ベンチャーの経営企画に転職。2021年4月より、香港の日系大手の海外新設法人で、経営管理責任者として従事。留学体験記

中西豪2s

中西 豪さん 中欧国際工商学院(CEIBS)/Class of 2018

中国新エネルギー産業の調査・コンサルティング会社起業、上海在住

2012年に外資系化学メーカーのR&D職を退職後、香港にて現地スタートアップ企業に就職。その後北京語学留学、上海現地企業にて新規事業開発業務に従事した後2016年にCEIBS入学。在学中に中国新エネルギー産業の調査・コンサルティング会社「INTEGRAL Co., Ltd」を上海で設立。中国人の妻と息子一人。上海在住。留学体験記

酒谷彰一2s

酒谷 彰一さん シンガポール国立大学(NUS)/Class of 2019

日系金融機関、シンガポール在住

2011年東京証券取引所(現 日本取引所グループ)入社。上場審査部にて東証市場へのIPO審査を約30社担当したのち、2018年にNUS Business Schoolに社費留学。卒業後、同社シンガポール支店の副支店長として、APAC地域の投資家及び発行体に対する新規開拓/RM業務に従事。特に現在はアジア企業の東証上場に向けたエコシステムの確立に注力している。米国公認会計士 留学体験記

モデレーター

小林峰s

小林 峰さん 香港科技大学(HKUST)/Class of 2019

日系大手通信系企業、シンガポール在住

2010年 国内大手通信会社に入社し、同社、国内グループ会社、インドネシア現地法人において法人営業に従事。2017年 HKUST MBAへ社費留学(執筆記事「アジアMBA社費留学の傾向とベネフィット」)。卒業後は同社にてAPACエリアのPMIを担当。現在、海外事業会社の経営企画部に所属し、戦略立案および事業再生に従事。シンガポール在住。

香港・シンガポール・上海の学生生活

授業・学生生活・クラスプロファイル

小林:まず本日の主題の1つ目である「学生生活」についてお伺いします。アジアMBAではDiversityが特徴の香港HKUSTやシンガポールNUS、そして中国市場に特化した強みをもつ上海のCEIBSとそれぞれ特色が異なります。皆さんのご経験を踏まえて、そのエリア・学校ならではの特徴、授業、学生生活を教えて頂けますでしょうか。

池田:HKUSTはクラスサイズは70~100人程度、国別比率は中国・インド・アジア諸国・北米・欧米と各国バランスが取れた構成比率になっています。授業ではグループワークが多く、グループメンバーは国籍・業種・職種など違うバックグラウンドの人同士が組むように工夫されています。このように、HKUSTの特徴の一つとして”バランスの取れたDiversity”が挙げられます。

次に授業については、”実業家出身の教授が多い”というのが特徴です。印象に残っている授業は複数ありますが、私が一番好きだった授業はPEファンドで働いた経験を持つLarry Franklin教授の”Investing in China and Asia”です。アジア各国の文化背景を踏まえて経営の意思決定、投資判断をしていくということを、過去自分自身が行ったディールを題材にディスカッションし深堀りするという内容で、リアルなビジネスでどう判断擦れば良いのかということを学ぶことができる、とても臨場感がある授業でした。

三つ目は、在学中のネットワークです。私は卒業後現地で働くことを最優先で考えていました。その際、学校からのキャリアサポート、卒業生からの支援が役に立ちました。具体的には、学校のキャリアサポートからキャリアコーチをつけてもらい、毎月レジュメのアップデート、模擬面接を行いました。そして面接が決まった会社については、その会社に勤務している卒業生を紹介してもらいました。また自分でLinkedIn経由で話しを聞きたい卒業生にコンタクトをとると、HKUSTの卒業生は皆Give精神が強く”Happy to help”と、会社の事情や面接対策などを快く教えてくれました。このようにHKUSTの助け合う精神には、とても助けられました。

HKUST_クラス_池田
HKUST:世界各国から集まる“バランスの取れたDiversity”

中西:CEIBSの学生の特色は、外資系企業で働いているアルムナイが多い点です。国有企業・起業を目指すというよりかは、グローバルな会社で卒業後働くことを目指す、王道タイプな優秀な学生が多い印象です。クラスプロファイルは、6割が中国人、4割が外国人ですが、外国籍の中でも華人系の人もいるため、全体の8割が中国人系となっています。クラスサイズは180人程度、私が入学した2016年当時は日本人は2年に一人ぐらいでしたが、ここ最近はCEIBSの認知度も上がり、年に5人ぐらいのペースで入学しています。

カリキュラムの特徴としては、中国をベースにグローバルで活躍したいビジネスパーソン向けに、CEIBSのPhilosophyでもある”China Depth, Global Breath”をモットーに構成されています。具体的には、アリババ、テンセント、百度など中国テックを題材としたビジネスケースを数多く取り扱う一方、グローバルなケースも一定数取り扱いながら、中国を中心としながらバランスをったグローバルなMBA教育を行っています。また一年目のTerm1、2ではグループワークが多くあります。4人グループだと、外国人は一人となり、中国人も英語は流暢に話せるのですが、議論が白熱するとどうしても中国語に切り替わってしまう場合も多かったです。私自身はCEIBS入学前から中国語が話せたため、周りの中国人クラスメイトからもほぼ中国人扱い、中国語でディスカッションを行っていました。このように、カリキュラムも環境もどっぷり中国に浸ることができたのは、私にとってはとても良かったです。

CEIBS_グループワーク_中西
CEIBS:唯一の外国人として中国人クラスメートとのグループワーク

酒谷:NUSは17カ月のプログラムで欧米より少し短いです。クラスプロファイルは100名中インド25%、中国25%と人口比で考えるとアジアのリアルに近い構成となっており、インド英語にも強くなれます。プログラムは「アジアフォーカスでマネジメントを学ぶ」のコンセプトの下、アジア企業のケースを用いてディスカッションを行うことが多く、ほぼ必ず題材国出身の学生がいることから、机上論ではなく、各国の実態に即した議論が行われることが大変興味深い点でした。加えて、総合大学の利点としてMBA以外の学部・学科との協業の機会が多い点も挙げられます。

MBA全体のスケジュールを少しご紹介します。私は三学期目にロンドンビジネススクール(LBS)に交換留学に行きました。アジアMBAのメリットとして交換留学先が多い点が挙げられ、アジアビジネスを学びつつ、欧米等交換留学先でも新たな経験ができることは大きなメリットだと感じます。その他の活動では、ケースコンペに出たり、投資会社でのインターン、ジャパントリップの企画などを並行して行っていました。詳細なスケジュールに関心のある方は、こちらの資料↓(※クリックで拡大)をご覧ください。

留学スケジュール_酒谷
NUS:留学全体スケジュール

次に授業についてです。私はMBA以前の海外生活経験が無い所謂“純ドメ”学生でした。そのような状況で、英語で議論・ビジネスができるようになりたいとモチベーション高く入学したのですが、当初は理想に実態が追い付かず、ディスカッション参加にとても苦労しました。一方でNUSはお互いに助け合う文化があり、英語がネイティブではない学生が発言する際には最後まで聞き、理解し議論を広げていこうというサポーティブな雰囲気があります。私もその環境に助けられ、徐々に授業でも発言できるようになり、後に学内外の様々な活動に主体的に参加できるようになったことは大きな自信となりました。

エリアごとの求められる中国語レベル

小林:ここで学生生活について質問がきております。それぞれのエリア・学校で求められる中国語のレベルは、いかがでしょうか?

中西:CEIBSに入学する日本人は受験のタイミングでは中国語初めてという人が多いですが、入学までの期間で勉強し、入学時にはある程度中国語でコミュニケーションできるレベルになって来る方が半数以上はいるイメージです。CEIBSは中国色が強い環境なので、中国語話せないと中国コミュニティに入れないところは正直あります。そういう意味で、中国語は必要不可欠と言えると思います。

池田:香港は中国に近いですが、留学のタイミングでは中国語の必要ありません。学校の授業・ディスカッションは全て英語のため、授業内で中国語を必要とする場面はないです。一方で、学校側としては、入学前に中国語を集中して勉強したい人向けにオプションを用意しています。入学後も更に中国語を学びたい人向けに、オプションの授業がありますが、必須ではありません。

酒谷:NUSもHKUSTと同じような状況です。中国語はなくても問題ないですが、あれば中国人とのコミュニケーションも円滑になり、より実りある学生生活になると思います。またシンガポールの現地就職を目指す際には中国語が役に立つ機会も多いので、積極的に勉強することは無駄にはなりません。

現地でのキャリアアップ・就職活動

キャリアアップ・就職活動

小林:次に本日の重要トピック、現地でのキャリアアップについてお伺い致します。

アジアMBA卒業生の現地就職・起業の割合は年々増えており、今日のパネリストお三方もまさにそのセグメントに該当されます。まず始めにMBA卒業後、そのまま現地の支店で働かれている酒谷さんに、MBAがどのように今のポジションに活きているか教えて頂けますでしょうか?

酒谷:MBAはキャリアチェンジ、キャリアアップのために活用するのが世界の主流であり、日本人のように社費派遣で来ている人は少数派です。このような状況下で私が社費MBAを志向した背景として、足下の業務は充実していたものの、今後国際分野の業務に従事し金融市場の国際化に貢献したいという思いがあったため、そのステップとしてMBAを活用したいと考えました。

MBA生活にも慣れ少し余裕ができた頃から、自社のシンガポール支店とも関わりをもち、情報交換や、NUSネットワーク内の業務関係者の繋ぎなどを行っており、この経験が、結果的に社内就活として機能した面もあったと思います。

また並行して現地の会社でインターンを行いました。卒業後に自社に戻る社費派遣生として、業務経験が1社しかないことはキャリアの多様性の面ではデメリットもあると考え、転職前提ではないインターンではあるものの、自社とは規模も役割も違う環境で働けたことは、現在の業務、また自身のキャリア形成の両面で大変役に立っています。

最後に卒業後シンガポールに駐在してからは、東証IPOの営業担当として、在学中に築いたネットワーク、またNUS MBAの肩書を活かした人脈の広がりが直接仕事に繋がるケースも多く、日々有難みを感じております。

小林:次に池田さん、実際就職活動を行う際にどのような戦略を立て臨まれたのか教えて頂けますでしょうか。

池田:まず全体的な就職活動の流れ・時期、リソースなどをお伝えし、その後自身の経験について補足してお話致します。

就職活動の流れは、8月にMBAプログラムが始まりますが、実際に就職活動が活発化するのは翌年の3月頃です。一つのピークはサマーインターンが決まる5月となっており、私自身も年明け1月頃から活動を始めました。

次にポジションの探し方です。一つ目は”学校のジョブポスティング”です。これは給与面など各種条件で合致しやすく、MBA生の就職経路として最も王道、確実な方法と言えます。二つ目は”LinkedIn、エージェント、ヘッドハンターからの案件紹介”です。三つ目は”コネクション経由の紹介”です。レアなケースですが卒業生が勤めている会社、教授がヘッドハントされた会社からの声がけなど、ネットワーク経由で就職するケースもあります。

給与水準については、アジアのHQを香港に置きMBA生を積極的に採用している企業があります。そのような企業はMBA officeに求人案件を出しており、そういった企業ポストでの給与水準は香港で十分生活が困らないようなレベルです。

私の場合ですが、将来的に経営者を目指しており、卒業後はベンチャー、もしくは小規模の会社で大きな裁量を持って仕事をしたいと考えていました。

そう考えた際、その時点で自分に不足している経験・スキルを、三つのインターンを通して補いました。一つ目のインターンは、日系のECを行う企業で香港でのマーケティング戦略のコンサルティングを実施。二つ目は現地のスタートアップの戦略オペレーション部門で5カ月間勤務。三つ目は自動車メーカーの香港HQにて、3カ月間サマーインターンを行いました。インターン募集は、一つ目は自分で直接探しアプローチしましたが、二つ目三つ目は学校のジョブボード経由で見つけました。

色々やりましたが、最終的には日本のベンチャー企業に就職しました。理由としては、私自身40代前半までに経営者になることを目指しており、より経営層に近いところで仕事ができ、その企業の経営者の方にも惹かれた事、そしてちょうどその企業ではS字カーブの2段階目に入るようなタイミングで得難い経験ができそうというのが決め手でした。実際に入社してみて、経営企画、マーケティング、営業など幅広い業務に携わることが非常に充実していました。

一方でタイミングもあり、当時経験していたことプラス、日系企業のグローバル化さらに中国フォーカスができる今の仕事のオファーをもらい、この四月より日系大手化粧品メーカー香港に新設された経営管理の責任者として働いています。

「実際に香港での現地就職、日本人はできるの?」と聞かれることは多いのですが、私は日本人は就職できない、ということはないと思っています。MBA受験と同じような感覚で、練習・対策すれば切り抜けられると考えています。具体的には、毎月レジュメをアップデートし、そして私は面接が決まった企業は必ずその企業に勤める卒業生にコンタクトを取り、話しを聞くようにしていました。そうすることで、自分が思い描いていた企業のイメージと現状のギャップを埋め、どのような人材を今その企業が欲しいと思っているのか詳細に把握するようにしていました。こういった対策を続けた事で、先に紹介したサマーインターンの募集も実際HKUSTのクラスメイトが十数人応募していたのですが、私のみ選ばれ、勝ち抜くことができました。

日本で就職する場合、MBAホルダー自体の数が少ないため希少価値も高く良い企業に比較的入りやすいという面がありますが、現地就職はそう一筋縄ではいきません。しかし、自分なりの戦術を磨き、強い気持ちを持って最後まで戦い続ける覚悟を決めれば、必ず良いところに就職できるはずです。

小林:卒業生ネットワークの話題が出ましたが、私は香港のMBAプログラムを修了し、現在シンガポールで働いていますが、母校であるHKUSTの卒業生はシンガポールに200人程います。キャリアアップをはじめとした卒業生間の情報交換は頻繁に行われています。そういった意味でも、香港・シンガポール間は人材の流動も活発で親和性が高い印象がありますね。

ここで皆様からキャリアに関連する質問を頂いております。インターンについて、どういった観点で選択をされたか、酒谷さん、池田さん、お答え頂けますでしょうか。

酒谷:証券取引所という特殊な組織において、スポーツでいえば選手よりも審判・運営側の立場で仕事をしていたため、反対側のプレーヤーの方々がどういった思考・プロセスで意思決定を行っているのか理解したいと思っていました。それは翻って、自社に戻った際の価値発揮、自分のオリジナリティになるとも考え、シンガポール発で投資活動を行っている会社でインターンを行いました。

池田:一つの考え方として、「レジュメで良い見栄えを作る」という観点もあります。例えば、希望する就職先があり、その際に自分に足りない経験をインターン先で補うという方法もあります。また別の考え方としては、インターンからフルタイムの仕事を直接繋げることも可能です。特に先ほど紹介したアジアHQが香港にあり、MBA生を積極的に採用している企業はこのようなインターンを募集しているケースが多いです。

パネルディスカッション_アジアMBA夏祭り_2021
パネルディスカッション当日の様子

上海で起業

小林:一方で在学中に起業された中西さんは、どのような経緯で起業されたのか、また実際に起業する際にCEIBSの学び・人脈がどのように活きたか教えて頂けますでしょうか。

中西:起業のきっかけは今から10年前、ドイツ系の化学メーカーにエンジニアとして勤めており、当時は欧米系の路線でキャリアを作っていこうと考えていました。外資系企業というグローバルな環境で働いていた時に、英語圏のグローバルな人材は多くいるが、その中で自分の差別化、優位性を見出したいと思い、一次会社を離れ中国・BRICS圏の国を見て回りました。その時に、経済の勢いを感じた中国で自分にしかできないキャリアを歩もうと決意し、会社を辞め香港のスタートアップに転職しました。

同時に起業したい、MBAを取得したいという思いはずっと持っており、これを両方達成し起業への足掛かりを作りたいと思い、CEIBSへの進学を決意しました。入学して半年の最もMBAで忙しい時期は、自分の起業にすぐに活かせる経営知識の習得を目的に授業に取り組みました。よくMBAで学んだ事は卒業後は役に立たないと言われることもありますが、私の場合在学中に今の会社を起業したこともあり、会社経営に必要となる会計、マーケティング、組織行動学(OB)、マクロエコノミー、コーポレートファイナンスなど、コアコースで学んだことをすぐに活用できました。

そのほか授業以外の内容で、CEIBSのMBAは中国で起業したい人にどう役立つか、「ビジネスの確立」「人材」の2つの観点で私のエピソードも交えてご紹介します。

一つ目は、「ビジネスの確立」というポイントです。CEIBSにあるeLabというスタートアップのインキュベーションセンターがあります。きっかけは、日本の政府系調査機関からCEIBSのeLabへ取材依頼があり、私が対応しました。その際に中国の新エネルギーに関するリサーチの相談を受け、この依頼がきっかけとなり、その後もリサーチの事業を継続する形で今の自分の会社を起業する形となりました。

二つ目のポイントは「人材」です。創業する際にメンバーを集めたいと思い、CEIBSのキャリアセンターに連絡し、紹介を依頼しました。時期的に学生がサマーインターンを探しているタイミングだったことから、自社のサマーインターン募集をCEIBSの学生向けに告知、1日で50件以上応募がありました。このサマーインターンに参加したCEIBS MBAの中国人、日本人学生1名づつはその後正式に創業メンバーとして会社に参画しています。このように外国人が作ったスタートアップで、全くブランドもない状態で優秀な人材が獲得できたのは、間違いなくCEIBSのおかげです。

またCEIBSはEMBAとEMBA合わせると一学年の人数が900人と、学生数がとても多いです。卒業後も中国でのビジネスに携わる人が大多数なため、CEIBSを通して得られる幅広い人脈は中国での就職活動、そしてビジネスにとても有益です。

CEIBS_eLab_中西
CEIBS:インキュベーションセンター“eLab”

現地での生活

池田:香港民主化デモについての日本での報道は局所的だと感じており、現地で生活する上では全く支障はないです。また香港の方がこれについてどう捉えられているかは、様々な見方があり決してネガティブなところだけではありません。

地政学的に変わってきている局面であるのは事実だと思います。今まで香港は海外からのゲートウェイでしたが、中国から海外へのゲートウェイになってきています。例えば、中国企業がアメリカで上場しにくくなり、香港市場を選ぶケースが増えています。こういった状況を受け、香港の金融関連で働く中国の方が増えている印象です。香港は中国の巨大マーケットの恩恵を受けて今後も成長していくと思います。

小林:そうですね。香港に隣接する中国本土の都市深センには多くのスタートアップ企業があり、香港を起点として世界進出していますね。米中摩擦の影響による香港市場IPOの増加は興味深いトレンドです。一方でシンガポールはいかがでしょうか?

酒谷:シンガポールはコロナ対応含めて政府の統制がとれており、良くコントロールされています。また一市民の観点では、新しいサービス(イノベーション)の積極的な取り入れによって、日々社会が進歩している印象をもっています。例えば、Grabというライドシェアを中心としたスーパーアプリ等、インフラのデジタル化が隅々まで進んでおり、スマホ一つで何でもできる生活となっています。さらに治安の良さ、安心・安全なところもシンガポールの人を惹きつける魅力の一つだと言えます。

小林:シンガポールは政府のコロナ対応もフレキシブルかつ徹底されていますね。シンガポールも香港も面積の小さい都市ですので、MBAアルムナイ同士がすぐに会いやすい環境でもありますね。最後に中西さん上海はいかがでしょうか?

中西:まずビジネス面でお話しすると、中国でのビジネス、起業は、米中摩擦や政府による情報規制、産業上の規制など様々なリスクを伴う面が常にあります。ただし、裏を返せばリスクが大きい分、チャンスが大きいと捉えられます。リスクがあり、不確定要素も大きい分、中国は日本企業にとって参入障壁が高い国となっているため、リスクヘッジをしながらうまく入り込むことができれば、巨大市場が待っています。

私自身の会社も、4年間で年間平均成長率200%、起業から3年目で売上1億円以上達成と、短期間で急成長することができたのは、大手が参入できていない領域でアドバンテージを発揮することができたからです。リスクがあったからこそ、うまくビジネスチャンスを掴むことができました。

次に人材面に関して述べると、今後グローバルで事業を拡大する際に、中国人タレントをうまく活用することがとても重要だと感じています。中国、特に上海では欧米留学したグローバルな経験を持つ優秀な若手人材が多くいます。中国にいながら、欧米のビジネスセンスも持っているため、外資系の企業で活躍しやすい人材です。このように、今後グローバルでビジネスをするのであれば、日本より中国の方が優秀な若手リーダー層を獲得しやすいマーケットだと感じています。

最後に生活面は、上海は世界各国の美味しい料理が揃い、ナイトライフも充実しています。美しい夜景を見ながら会社の仲間やクラスメイトと美味しい料理を食べながら将来を語り合うと、とても野心を掻き立てられます。

小林:そうですね、私もインド人をはじめとしたアジア系エグゼクティブとの協業機会が多く、アジアMBAでの経験が非常に役立っています。アジア系ハイクラス人材の需要は世界各地で増えており、彼らを活用するスキルを磨くにはアジアMBAは打って付けですね。

アジアMBA&アジアで働くことを目指す方々メッセージ

中西:MBAを目指す方は上昇志向が強い方が多いと思います。そのような方でも、実際にMBA留学が成功する人、あまり成功しない人、両方いらっしゃると感じています。MBA留学の成功の鍵は受験準備のタイミングから決まっていおり、成功する人に共通している点は“自分の殻を破り、チャレンジする明確な目的意識を持っている人”です。このような決意がMBAで成長するための活力になるので、受験勉強大変かと思いますが目標設定の部分もおろそかにせず頑張ってください。

酒谷:二つ思い浮かんでいることをお話します。本日は少々格好を付けてお話していますが、私自身MBA留学前は英語圏で仕事をすることは全く想像できませんでした。先ほど中西さんもおっしゃられた通り、MBAは自分の殻を破る、キャリアをレバレッジする機会としてとても有用であり、かつそれを成長市場のアジアで実行することには大きな価値があると思います。この点に関心がある方は、是非MBAを目指して欲しいです。

二つ目は、得るものばかりではないということをお伝えしたいです。MBA留学は、資金面、生活環境、周りの人にも大きな影響を及ぼします。ノーリスクで何でも得られるわけではないので、周りの方の生活、そして自分の人生で何が一番大切なのか天秤にかけて、後悔の無いMBA留学を決断して頂きたいです。

池田:私自身はキャリアアップしたい、子供に良い教育を受けさせたいので給与アップしたいという思いと、MBA以前は上司のやり方を見て仕事をしていたが、その方法が正しかったのかMBAに行って解を見つけたい、ベクトルを持ちたいという思いからMBAを目指し、思いだけで突っ走った分、受験勉強では苦労をしました。

ここまでHKUST MBAは自分に必要なワンピースだと信じ突っ走ってきて、苦労も大変な事もたくさんありましたが、今自分があるのはMBA進学の経験があったからだと信じています。皆さんも思いがあるのであれば、信じて進むと道は開けるので、自分の思いに正直に向き合って欲しいと思います。

まとめ_パネルディスカッション
アジア現地で活躍する卒業生によるパネルディスカッション:まとめ

小林:本日お三方より「アジアMBAの日本人は何故現地でキャリアアップできるのか」について、学生生活・就職活動・現地での生活の3点の切り口からお話をお伺いしてきました。これは一例に過ぎませんので、各学校の説明会などを通してよりアジアMBAについての理解を深めて頂き、本日のセミナーがご自身の解を見つけるきっかけとなりましたら幸いです。

※本セミナーの内容は個人の意見であり、所属企業・部門見解を代表するものではありません。

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