【MBA留学体験記】香港科技大学(HKUST)池田 豊 <2018年入学>

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プロフィール

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池田 豊(いけだ ゆたか)

アメリカの大学を卒業後、日本の国内証券会社に入社。IPOアドバイザリーに従事した後、香港に海外転職し、日系大手銀行を経て、日系大手電機メーカーの香港地域統括会社で、経営企画部門責任者として、グループ再編、地域事業戦略立案・策定、新規事業開発を推進。2018年香港科技大学(HKUST)MBAに私費留学し、2020年より日系ベンチャー企業の経営企画部門に入社。

アジアMBAを選んだ理由

当初、アメリカのMBAスクールがランキングで上位を占めていることから、アメリカへの留学を考えていました。ただ、香港で働いている中で、HKUST MBAの名前をよく耳にすることがあり、次第に興味を持ち始め、キャンパスのInformation Sessionに参加しました。そこで、サンプルクラスや在校生との話を通じて考えが変わり、HKUSTを第一志望として出願することにしました。

HKUSTに決めた一つ目の理由としては、「プログラムの質」を感じたことです。Information Sessionに参加した時、サンプルクラスで登壇したのがLarry Franklinという名物教授(※)でした。テーマがInvesting in Chinaというもので非常に面白く、50人ぐらいのオーディエンスに発言させながらインタラクティブに進めていたことが、強烈に印象に残りました。素直に、このような教授がいる学校で授業を受けたいと思いました。また、在校生と話していても、当時2月ぐらいでしたが、「何かしらやりたい仕事は見つかる」という余裕が感じられ、欧米のトップスクールと同じ質のプログラムを提供していることに確信を持てました。

(※)Larry Franklinのクラスの様子は、こちらのYouTubeからご覧頂けます。

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参加したInfo SessionがHKUSTを志望するきっかけとなりました。

そう考えたとき、2つ目の理由になりますが、MBA留学後、香港もしくは日本で仕事をすることを考えると、求人情報、卒業生のネットワーク、面接を受けやすいという観点から、就職する場所に近い学校でMBAを取得する方が良いと考えました。また日本人卒業生が、欧米のMBAスクール卒業生と同じような会社に就職できていたのも、安心材料の一つでした。

そして最後の理由になりますが、将来のネットワークもアジアMBAに留学した方が、メリットがあると考えました。私自身、今後は中国・アジアがビジネスの中心になっていくと考えており、将来もアジアのどこかでキャリアを積んでいくことをイメージしていました。そう考えると、卒業生のほとんどが、香港や中国等、アジアで働いているアジアのスクールの方が、有意義なコネクションが築けると考えました。

なぜMBAを取得しようと思ったか

職務経験を10年以上積んだ中で、上司から教わり自分なりに考えて仕事をしてきて、そのやり方でよかったのか、もっと良いやり方があったのではないか、と思うことが多くありました。MBAに行き、ビジネスのスタンダードを知り、ある意味「軸」を持つことで、今後キャリアを歩むうえで、より自信を持って仕事ができると考えました(*エッセイでは、自信を見せる必要があったので、建前で他の理由を書きました)

卒業後にどのようなキャリアイメージを持っていたかというと、現実的な部分では、子供に良い教育(インターナショナルスクール)を受けさせるために単純にもっとキャリアアップして稼ぎたいと思いました。仕事の面では、格好良く言えば、「日系企業の技術のポテンシャルを経営の面から引き上げたい」という想いを持っていました。前職で、きっかけとなる原体験があるのですが、新規事業のプロジェクトを推進しているときに、技術力は持っているのに、戦略の立て方や進め方、スピードによってビジネスが取れず、もっと出来るのにもったいないことがありました。

そして、もう少し小さな規模の会社で大きな裁量をもって仕事がしたいとも思っていました。大手にいると、経営責任を持てたとしても通常50代になってからです。また、自分ではコントロールできないことが多くあります。私は、それよりも、今どんどんチャレンジをして、40代前半には経営責任を持てるぐらいになりたいと考えていました。

私の場合は、年齢的に職種転換やポテンシャル採用は難しいと思ったので、これまでの経営企画の職務経歴の延長線上で、できれば事業企画や事業開発といった、もう少し事業寄りのポジションを希望していました。そして、妻が香港で働いていて、子供の教育を考えても香港が良いと思っていたので、香港勤務の仕事を探しました。

MBAのスケジュール

HKUSTのプログラムは一年です。8月から始まって、早く仕事に戻りたい人は多めに単位を取って5月末に終えることもできます。また、多くの人は、夏休みを挟んで、約3か月、欧米アジアで提携しているMBAスクールに交換留学し、16か月で終了します。入学時点では決める必要はなく、就職状況などに応じて考えることができます。

私は、折角MBAに入ったからには色々経験したかったので、夏休みにサマーインターンをして、その後、交換留学する16か月コースにしました。MBAは、もう少しゆとりがあると思ったのですが、特に最初の半年は忙しかったです。9-12月までは必須科目が多く、毎週の翌週の授業までにグループワークが課されるので、授業自体は週2-3でしたが、授業がない日もほとんど学校で集まって作業をしていました。年が明けて1-5月までは、選択科目が増えて自由な時間もできるので、私は、本格的にインターン・フルタイム応募に時間を割きました。

交換留学は、上海の中欧国際商工学院(CEIBS)にしました。中国での生活を体験しておきたかったのと、中国の最新ビジネスを学びたかったので、中国の学校を選択しました。

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私が取得したコースの一覧です

実際入ってみてどうだったか

私のIntake2018はクラスメート85名でしたが、彼らと一緒に学べて本当に良かったです。おそらく、どこの学校でも、プログラムの内容は似たり寄ったりだと思うのですが、プログラムにいる仲間によって学校の雰囲気が変わります。その点でいうと、HKUSTは、さまざまな国籍・バックグラウンドを持った優秀な人達が集まり、ダイバーシティ、チームワーク、Contributionを大切にするカルチャーがあります。そして、全員、仕事を辞めて更なるキャリアアップを目指して、相当の覚悟と意気込みを持ってプログラムに来ているので、クラスの熱量が物凄かったです。そういった人たちと、中身の濃い時間を一緒に持てたことは、何よりの財産です。

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学校への貢献として、Japan Trekを企画開催し、クラスメートに日本の文化・企業体験してもらいました

HKUSTの「アジアのグローバルMBA」というのも非常に良い位置づけでした。クラスの人種構成は、ざっくりいうと、半数が中国人・インド人、残りの半数が、東南アジア各国、台湾・韓国・日本、アジア好き欧米人、という感じだったのですが、実際のアジアの職場環境にとてもよく似ていて、非常に良い訓練の場となりました。

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International Nightでの写真: 20か国以上から優秀な人たちが集まります

また、授業もアジア視点で中国・アジアのことを学べるので、欧米のMBAスクールと比べて、アジアについては、より深い知識を得ることができたと思います。授業で扱うケースは、アジアのものが多くありますし、中国が物凄い勢いで進化しているモバイルアプリやデジタル化は、現地の学校に行かないと気づかない点が多くあると感じました。

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Luxury Strategyクラス:高級ブランドのアジア進出のプロジェクトに参画しながらの学びました

卒業生ネットワークは就活時に役立ちました。フルタイムだけではなく、パートタイムとEMBAも含めると、香港のほとんどの企業には誰かしらHKUSTの卒業生がいて、主にはLinkedIn経由でアプローチしていくことになりますが、お願いすると沢山の方が快く話してくれました。

就職活動の進め方

香港勤務の仕事を最優先に探しました。どのように探したかというと、いくつかあります。一番活用したのは、学校のJob Boardです。企業側がMBA生を採用する目的で求人を掲載するのですが、中にはHKUSTを優遇しているものもあるので、職務内容がMBA生の求めるものに近く、採用の確率も高いです。 香港のインターンで一緒だったCambridge MBAの香港人は、「学校経由では香港の求人情報は入ってこないので、自分でLinkedInから探した」と言っていました。やはり、現地にある学校が、その地域の求人情報を一番持っていると思います。

その次に活用したのはLinkedInです。そして、最後に、たまたま良い求人が来ることもあるので登録しておくという感じですが、香港現地の日系/ローカルの人材紹介会社/ヘッドハンターです。クラスメートでいうと、ネットワークからオファーを獲得した人がいますが、こればかりは本当に運で、アンテナを張っていると、元同僚、卒業生などの紹介からオファーをもらえた人がいました。

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学校のJob Board: MBA生を採用した企業がここに求人を掲載します

私の話でいうと、結果的に、香港勤務の仕事では、2つ(①日系大手高級車ブランド、②日系大手総合リース)からフルタイムのオファーを頂くことができました。①は、学校のJob Boardから応募してサマーインターンを勝ち取り、最終的にフルタイムオファーをもらいました。②は、LinkedIn経由でヘッドハンターからアプローチがあり、面接に進みトントン拍子で決まりました。ただ、オファーまでの過程で、1000件以上の求人はみて、100件以上応募して、10社面接していたので、決して簡単な道のりではなかったです。

香港勤務の仕事を探してみて、当初想定したより期待以上だったのは、MBAを持っていることで応募できるポジションが、意外と多く存在するということです。就職活動をしてみて、MBAに入らなかったら、きっと巡り会えなかったと思うポジションがいくつもありました。一方、厳しさの部分でいうと、世の中には、MBA、物凄い経歴、語学堪能、CPA/CFA資格を持っている人が沢山いて、また近くではクラスメートも競争相手になるので、自分の強み弱みを把握して戦うことが重要でした。

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KelloggのEnergy Case Competitionで優勝した時の写真。グループワークを通して、自分の強み弱みを知ることができます

私の例をだすと、事業会社のStrategy、Business Development, Business Planningのポジションを志望する中で、他の応募者よりも少しでもアドバンテージを持とうと、キーワードにJapanが引っかかる案件(日本のマーケットをカバーしている、外国語の中で日本語を要求している)を中心に見ていました。オファーをもらえた要因として、この点で優位に立てたことがあると思いますが、加えて、パナソニックでの製造業の経験、香港での就業経験、国際経験も評価頂けました。

ただし、難しさを感じたことも色々あり、香港現地の日系企業でいうと経営幹部ポジションは駐在員で埋まっており、そもそも求人案件が少なかったです。また外資系だと、Strategyというポジションがない企業もあり、FP&Aというのが近いポジションになりますが、財務経理の経験、CPA/CFA資格を持っていないとアピールが難しかったです。私の志望していた職種での話になりますが、金融やコンサルでも、業界業種で必要となるスキル・経験があるので、そこを踏まえて自分がどう戦うかよく考えながら就活することをお勧めします。

もう一つ重要なのは、就職活動するうえで、徹底的に準備をすることです。私がやったことはシンプルで、①学校のキャリアセンターの担当者と密に連絡、②学校が提供する外部のキャリアコンサルトと月一で会いながらレジュメのアップデート、面接の練習、③面接が決まったらLinkedIn経由でアルムナイにアプローチして会社仕事の理解を深めて自分のイメージと現実のギャップをなくす、ということです。クラスメートを見ていても、意外と粘り強くやり続けられる人は多くないですし、特に③の部分をやっておくと、他のキャンディデートと比較してしっかり準備した印象を与えられます。欧米諸国と比較しても、香港は総じて日本人が活躍できる場が多くあると思いますので、香港現地の仕事にチャレンジしてみる価値はあると思います。

色々書きましたが、私が最終的に選んだ仕事は、前述の二社ではなく日本勤務の日系ベンチャー企業の経営企画の仕事を選びました。そして、家族で話し合い、特に子供のことを考えて、家族は香港に残して、逆単身赴任のような形で働くことにしました。香港勤務の希望するポジションに就けなかったのは、これまでの職務経験では、私の求める職務内容・給与の仕事がもらえなかったことに尽きます。

一方で、香港と日本の両方で色々な会社に応募した中で、私の次のキャリアとしてベストと思えるポジション、会社に出会えることができました。就職活動をしながら、次のキャリアを選ぶ上で何を重要視するか色々と考えに変化はありましたが、最終的には巡り巡ってMBA入学前のキャリアイメージに戻りました。結局、自分なりの「仕事へのやりがい」、「働きたい環境」に関しては、MBAを終えた今も気持ちの変化はありませんでした。仕事内容に魅力を感じたことに加えて、経営陣や株主投資ファンドの方々と同じ価値観を共有でき、最後は私の「人となり」を含めて評価頂けたことが決め手になりました。期待に応えられるよう頑張りたいと思います。

最後に

振り返ってみても、アジアMBAを選んで間違いはありませんでした。アジアのMBAは欧米に劣ると思われている方がいますが、プログラムの質はトップスクールに匹敵するレベルです。質の高いプログラムで、現地のことを深く理解し、中国アジアという軸で、エッジの立った人材になりバリューを高めることができます

現地就職は簡単ではありません。ただし、チャンスがないわけでもありません。むしろ、欧米諸国に比べたら沢山チャンスがあると思います。

これからはアジアの時代です。そしてアジア各国、日本との親和性はとても高いです。アジアには日本人が活躍できる場が沢山ありますアジアの物凄い経済成長の中、刺激にあふれる毎日が送り、成長できることは間違いないです。思い切って、アジアに飛び込んで学んでみてはいかがでしょうか。

長文を読んで頂きありがとうございました!!

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