プロフィール
名前 | 中西 豪 Nakanishi Go |
入学時年齢 | 32歳 |
学歴 | 横浜市立大学国際総合科学部 (学士、修士 専攻:有機化学、2009年3月卒業) |
職歴 | (現職)上海恺枫商務咨询有限公司 創業者(インテグラル) (前職)衛材(中国)薬業有限公司 事業開発部(エーザイ中国)、香港現地スタートアップ 化学品事業部、BASF(日本)R&D <MBA前:勤務年数7年> |
留学方法 | 私費、既婚、子供有 |
海外経験 | 大学時代、オーストラリアに交換留学経験あり、2012年より香港で就職、北京に短期語学留学を経て上海で就職経験あり。 |
GMAT | Total 680 (Q50/V31) |
中国での起業、そのために選んだCEIBS(選んだ理由)
私が中国でMBAを取ろうと思ったのは長年準備してきた、中国での起業に向けて最終仕上げを実行するためでした。数あるビジネススクールの中でCEIBSを選んだのは、上海を中心として中国で抜群のブランド力、ネットワーク力があるからでした。
私が日本で外資系の化学メーカーでR&Dをやっていた時に中国で起業すると決意したのは、MBA入学の約5年前のことです。
誰かと同じことをやっていても意味がない、人生一回きり自分がやりたいことに思いっきり情熱を燃やして生きていきたい
という単純な思いから、これまで突き進んでいた欧米での発展路線、技術でのキャリア路線を180度転換し中国でのビジネス路線を歩み始めました。
まずは起業を視野に入れながら、香港現地スタートアップでゼロベースからの新規事業開拓を経験し、その後北京にて中国語を学んだ後、上海で就職しました。その当時から「CEIBS(中国では「中欧」と呼ばれている)」の名前は中国人の同僚などからよく耳にしていました。
中国では欧米企業同様にMBAは採用において明らかに有利になる傾向があります。私がいた化学や製薬業界では、トップ企業へ最短でマネージャーレベル以上のポジションにつくための王道手段として、若いキャリア層の間でしばしばMBA取得は話題になります。特にCEIBSは上海における企業間での知名度は高く、有名な大手企業であればほぼ全ての企業にCEIBSの卒業生達が入り込んでいると言えるでしょう。
私が当時働いていたエーザイ中国の副総経理(副社長にあたる)もCEIBS卒業生で、私がビジネススクールを選ぶ際によく相談にのって頂きました。この副総経理に私が、「MBAを取った後起業したいのだがどのスクールが良いと思うか?」と尋ねた時に彼から言われたのは、「国際舞台で発展したいのなら欧米のトップスクールに行け、中国で発展したいのならCEIBSに行け」というアドバイスでした。
他の中国のビジネススクールもいくつか検討しましたが、中国でのブランド力ではほぼ同程度という認識で、最終的にはよりアルムナイ・ネットワークが広大なCEIBS(MBAは1学年200人程度、EMBAは毎年700人程度)を真剣に検討するようになりました。最終的にはキャンパスビジットを通じて在校生と対話、構内の雰囲気を知り、あとは直感で「ここだ!」と思って決めました。
全体スケジュール
CEIBSのカリキュラムは7学期(ターム制)で構成されており、第1~3ターム(8月の入学から翌年の3月まで)が必修科目で第4~7ターム(4月から翌年の2月まで)は選択科目となっています。交換留学は第6ターム(9月~12月)に行われます。
<取得コース数>
各タームで取得したコース数
<忙しさ度合>
各ターム毎費やした時間を%で表示
ザ・エリート集団に囲まれる(クラスメート)
入学式1日目、私の初めのクラスメートへの印象は外資系企業でよくいる英語が上手く、人当たりが良く、リーダーシップがある「王道に優秀なタイプ」でした。1学年で200人近くもいるので、中には起業家に多い超個性派タイプやクリエイタータイプも一部見られますが、ほとんどが王道に優秀なタイプでこの印象は最後まで変わりませんでした。
またクラスメートの7割は中国人で、1割は欧米系白人、1割はインド人、韓国人、残り1割は東南アジア、アフリカ、南米から数人程度という構成でした。極東・日本からは私含めて二人だけで、完全にその他カテゴリでした。
MBAで自分の殻を破る!(MBAでの目標)
CEIBSでのMBA生活を始めるにあたって二つの目標を決めました。
一つ目は学期中に起業すること。
二つ目はMBA生活を通じて自分の限界値を突破すること。
ネイティブレベルに近い英語環境で行われるMBAカリキュラムでは、よく日本人は課題などはきちんとやるが授業での発言が少ない、プレゼンが下手、だとか言われますが、絶対にそれだけは言わせまいと心に誓いました。
もともと私は大学新卒から外資系企業で勤めていたこともあり、外国人とのディスカッションはある程度経験があり、言葉の壁という点では障壁は比較的低かったように思います。しかし、どちらかというと内向的な性格の私は大勢の人前でスピーチしたり、発言したりする時はちょっと勇気が必要なタイプでした。
だからこそMBAは自分の殻を破る良い機会だと思いました。
一回の授業につき最低1回、平均2回発言すると決め、質の良い発言をするためにも授業前の準備は入念に行いました。
プレゼン完敗!そこから得た転機(自信を得ることができたエピソード)
CEIBSの授業は1クラス60人程度、基本ケースを中心に進められ、教授がケースの論点について生徒に問い掛け、生徒が積極的に発言しお互い議論することで授業を盛り上げてゆく欧米スクール形式によって展開されます。
第1ターム最初の授業がスタートし、私は早くも周りの学生の勢いに圧倒されることとなりました。授業中、常に無数に上がる手、他のネイティブ学生の即興でのパワフルなプレゼンを目の当たりにし、自分の手が鉛にように重く感じられました。
それでもだからこそここで手を上げなければと思い、やっと手を上げてもなかなか当ててもらえません。教授が気づき、やっと自分に発言の機会が回ってくると今度は手が汗でびっしょりになるほど緊張してしまい自分の考えを思っている通りに言えず、
教授からは「まあそういう考え方もあるね」と流されてしまいました。
また、リーダーシップ論の授業では突然教授からランダムに選ばれ即興プレゼンをさせられ、何ともモノトーンなプレゼンをしてしまい
教授から「もっとパッションを出せ」と言われたこともあります。
このような調子で結果第1タームは完敗に終わりました。凄く悔しい思いをしたし、これが自分の限界なのかとも思いました。
転機となったのは第2ターム。ターム1では愚直に授業の準備は怠らず、どんなに緊張しても発言するということを繰り返した結果、ターム2からは自然と挙手、発言できるようになり、議論が面白く感じられるようになりました。波に乗っていると自分の考えもより研ぎ澄まされて、自分が切り出した観点について、
教授が「それは良い観点だ、この点について他のものはどう思う?」
と議論が発展していくことも多々ありました。
クラス代表として臨んだマクロ経済学のプレゼン(印象に残っている授業)
一番印象に残っているのはマクロ経済学の授業(意外にもCEIBSでは一、二を争う人気講義)です。
この授業で、2009年に起きた米国金融危機と石油価格の暴落について、マクロ経済の観点からこの現象が起きた理由を分析し、プレゼンするというグループ課題がありました。課題は事前に与えられ、準備はできるがプレゼンできるのは1組だけ。しかもどのグループが発表するかは教授が決め、プレゼン直前までは公表されません。かなり力を入れて発表資料を作り、自分のグループが発表することになるという予感がしたため、入念に発表準備をして臨んだところ予感は的中しました。しかも、なんと自分一人で全ての内容を発表することに!
練習していたこともあり全てを出し切ってプレゼンが済むと、教授から「Too good!」と絶賛され、クラスメートからも「あの発表すごかったな!」と声をかけられることができました。他のクラスでも噂は広まり、すごい発表をした日本人がいた、と騒がれていたらしいです。胸を張って喜べたし、それからケースコンペティションなどのイベントの際は毎回10人以上から一緒に出ないか、と誘われるようになりました。
ジャパンナイト(アクティビティ)
もう一人の日本人同級生と勢いで企画した二日連続でのジャパン・ナイトの開催などまだまだ書き切れない思い出話しはたくさんあるのですが、その辺は同級生の書いたブログ(CEIBS MBA日記)などを参照してください。今でもプレゼンやスピーチの際は緊張する癖は治りませんが、CEIBSでは自分の殻を破り上の世界を見るという経験を積めたことが何よりも財産であり、自信になりました。
CEIBSでは中国語は重要!
実は私はCEIBSでの中国人クラスメートとの会話は全て中国語で行なっていました。
というのはCEIBSの学生は中国人が対多数を占めており、中国人同士の会話は当然のことながら中国語で行われます。自分の場合、中国語が話せるということは皆分かっていたし、5人程度で形成されるグループではどういうわけかいつも自分は唯一の外国人であったためグループでのディスカッションも中国語によって行なわれていました。
ネイティブの中国語の中で議論に貢献していくのは非常に大変でしたが、これを毎日繰り返していくうちに段々と慣れてきて、卒業する頃にはすっかり中国語で意見をスラスラ言えるようになっていました。
また、そうすることで中国人からも日本人というよりもむしろ中国人よりだと思われていたため、最大勢力である中国人コミュニティにすっかり溶け込むことができたのも良かったです。外国人学生の中では中国語がたどたどしくても積極的に中国語を学び、中国人と交流しようとする者もあり、そういうタイプは中国人の間でも人気者でした。
MBA後半はCEIBSネットワークをフル活用し起業準備に専念
第4タームが終了すると、最初の一年プログラムが終了し、学生達はインターンなどそれぞれの目的に向かい一旦解散となります。
私の場合は最初の一年で単位を全て取り終え、後のインターンや交換留学には参加せず、起業活動に専念することにしました。この時点で卒業まであと9ヶ月ほど残っていたので、卒業式までに事業の基盤を固めたかったのが理由です。
私はまずは自身の台湾人のメンター(CEIBSにはメンター制度があり、MBA学生一人につきEMBAのメンターがつく)に相談しました。彼も若くして中国で起業し、ゼロから会社を築き上げてきた経営者です。私とは普段中国語で会話をし、中国人の私の妻も含めて家族ぐるみで付き合っています。私が始めにやり始めたのは新エネ/環境分野での日中企業間のビジネスマッチングであり、メンターにCEIBS EMBAのネットワークで誰か競争性のある技術・商材を保有している会社の経営者はいないか、と尋ねました。彼は即座に携帯電話を取り出すと、青島にある断熱窓ガラスメーカーの社長に電話を掛けました。事情を簡潔に説明すると、了承は得たから彼にコンタクトするように、とWeChat(中国版のLINEのようなアプリ)でこの社長のアカウントに繋いでもらいました。それが現在私が日本で行なっている日本初の中国断熱窓ガラス販売事業のスタート地点となりました。
また、後に北京大、清華大の日本人MBA生とも交流を深める機会があり、とあるきっかけによりNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が日本人による中国での起業活動について調査しているのでCEIBSを取材をしたいという申し出があり、私がガイド役として引き受けたことがあります。この出会いがきっかけとなり、NEDOから中国における新エネ産業の調査をやってみないかという依頼を受け、現在私が経営している中国新エネ産業の調査・コンサルティング会社(INTEGRAL Co., Ltd)の設立に繋がりました。
このように私が起業する際にきっかけとなった全てはCEIBSに由来しています。そういう意味でも私が入学時に心に誓った二つの目標は十分に達成できたと思います。全てはCEIBSのおかげであり、受験時代のあの時に自分の直感を信じてCEIBSに来ることを選んで本当に良かったと思っています。
未来のアジアMBA生への応援メッセージ
私の場合、MBAを目指した理由、得られたものは王道路線とは異なりキャリアアップを目的にしている方にはあまり参考にならないかもしれません。
しかし私がここで出会った、あえてアジアのMBAを目指すという日本人はちょっぴり変わり者(笑)が多く、順調なキャリアを一旦捨ててまで他の人と違った何かを得るために来ている方達がほとんどです。
ここ中国のビジネススクールには無限の機会があり、目的を持ってチャンスを自身の手で掴みに行こうとする者には無限の可能性があると思います。
私のようなものでも曲がりなりにもきっかけを掴めたわけですから、誰だってできると思います。受験生活はきついですが、それを乗り越えたら楽しいキャンパスライフが待っています!頑張ってください。
<参考>留学費用
※在学当時の留学費用概算、為替は2018年12月現在のものを使用