【MBA留学体験記】中欧国際工商学院(CEIBS)池田峻也 <Class of 2020>

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目次

プロフィール

名前池田峻也 Shunya Ikeda
入学時年齢29歳
学歴東京外国語大学外国語学部(専攻:トルコ語、2012年3月卒業)
職歴総合商社 (MBA前勤務年数6年)
留学方法私費
海外経験大学時代トルコに1年、カナダに4か月留学経験あり
CEIBS_池田峻也

入学前

「競争優位性」・「好奇心」から選んだ、「中国×MBA」・CEIBS

MBAをとりたいという気持ちが芽生えたのは、社会人4年目にある国際的エネルギープロジェクトを担当した際、一担当者としてプロジェクトの価値上昇に貢献できていないという挫折感から、国際社会で通用する人材になりたいとより強く感じたことがきっかけでした。当初は欧米のスクールも検討しましたが、最終的にアジアのスクールを選んだ理由は自身の「競争優位性」を向上させたいという思い、そして中国という国への「好奇心」の二点からです。

  • 「競争優位性」:多くの人々と同じように、MBAといえば欧米の有名ビジネススクールが王道だという印象が私自身もあり、正直に言うとアジアのビジネススクールへの入学は真っ先に候補としてあがってくるものではありませんでした。しかし、思い返すと自身が高校生の頃志望大学を選択した当時も、BRICsに次ぐ成長国家群にあった中小規模の国々、その中でもトルコに興味を持ち、将来自身のビジネスマンとしての希少性を高めたいと考えトルコに留学する決断をしました。元来、マジョリティにおける一要員となるよりも、エッジの効いたマイノリティ分野の中で自身を高めたい、そしてプレゼンスを発揮し戦っていける人間になりたいという思いが強かったのかもしれません。今回も、欧米諸国ではなくアジア、特に成長著しい中国に身を置きその環境下でMBAをとることで、王道とは一線を画するような自身のエッジを高めたいと考えました。
  • 「好奇心」:20代前半には、日本から遠く比較的神秘的な(?)国々に興味があり、留学だけでなく旅行先も中東・アフリカ等が中心でしたが、多岐に亘る事業を行う総合商社に身を置く中で、どのような事業分野においても無視することができない中国という隣国への好奇心が段々と湧いてきました。経済・歴史・文化等様々な面でこんなにも日本と関係が深く、強大で複雑、且つ魅力的なこの隣国のことを自分はあまりに知らないと切に感じ、中国への興味が増大していきました。

自身の「競争優位性」を高めたいという思いと、素直な「好奇心」。この二点を満たし、且つ自身が望むハードスキル・ソフトスキル・人的ネットワーク等といった価値を得ていくのに最適な学校はどこかという観点で北京、上海、香港の学校を検討しました。アプライ前に候補の学校のオンライン面談、キャンパスビジットを通して、中国大陸へのコミットメント・プログラムの質共に最適と判断したCEIBSに留学することを決意しました。 

在学中

MBA全体スケジュール

CEIBSでは7 Term、約18か月間から成るカリキュラムが組まれています。毎年若干のカリキュラム変更はありますが、私の在学中はTerm 1、2、4にコアとなるハードスキル科目、Term 4には加えてICSP (Integrated China Strategy Project)という実際の中国企業と提携する所謂コンサル・プロジェクトの必修科目があり、Term 3、5、6、7に選択科目を受講するというものでした。他のビジネススクールと同様、必修科目があるTerm 1、2、4は授業・課題量がインテンシブで寝る間を削って授業に臨む期間、Term 5以降は交換留学やインターン等各自の優先順位に合わせてスケジュールを組む期間になります。

CEIBSにはTerm 3、5、6、7の選択科目をTerm 2、3、4、5に詰め込み12か月間で全コースを終了させるショートトラックもあり、私は本コースを選択しました。制度としては存在するものの、実際は非常にインテンシブで毎年本コースを選択するのは1人いるかいないかというレベル、相当なコミットメントが必要と学校側からは聞かされていました。(私の代では、韓国人同級生と私の2名のみが本コースを選択)

また、私は中国でMBAを取得するからには外国語としての中国語習得も同時に目指しており、具体的にはHSK6級・HSK口語高等レベルに半年程度で到達しその後学内・実業での実践を通じビジネスレベルまで向上させるという目標を立てていました。結果的には12か月間でのショートトラック・中国語の目標共に達成できたのですが、タイム・マネージメントには大変苦労しました。メリット・デメリット・及び反省点については後述しますが、自分の基準を以て優先順位を決める(何を犠牲にするかを決める)ことが非常に重要だと思います。

<取得単位数>
※1コース2単位が通常。コースの時間数によっては、1単位、4単位もあり。

<忙しさ度合い>

授業風景 – Entrepreneurship_CEIBS_池田
授業風景 – Entrepreneurship

印象に残る授業

オンキャンパス、オフキャンパス共に印象に残っている授業はいくつかあるのですが、敢えてCEIBSならではの中国に関わる授業で特に印象に残っているものを二つ紹介します。

Shenzhen – The Rise and Make of Global Innovation Hub

中国のイノベーションハブである深セン市のエコシステム発展モデルを学び、また中国を代表する企業であるテンセント、Huawei等がどのようにして発展を遂げたかをケース及び実際の企業訪問双方向から考察、イノベーションの鍵を理解する授業。

企業訪問は、深セン市を代表するテック企業の他、E-Commerce、VC等数社を訪問し、エコシステムが発展した深セン市において如何に各社が企業戦略を立てているかを考察し議論しました。深セン市訪問前には、選択科目でイスラエル及びアメリカ(シリコンバレー)夫々で、同様なイノベーションに関する授業があり、世界を牽引する他のイノベーションハブと深セン市との比較において、エコシステム、起業家マインドセット等中国式のイノベーションを学ぶのに非常に役に立ちました。

深センModule -Tencent訪問_CEIBS_池田
深センModule -Tencent訪問

Design Your Life

茶畑が広がる中国の農村、兪源村に行き「あなたにとっての成功とは何か」、「どのような人生を送りたいか」、「あなたにとってキャリアの中で重要なことは何か」といったことをCreative Problem Solvingのフレームワークを通して分析し、自己の人生におけるマテリアリティーを考える授業。農村で暮らす人々の生活を観察する中で、自己を見つめ、人生を振り返る。人生における夢は何か、自身の歩んできたキャリアはその夢に結びついているか、仮に今の夢が達成しえないものとなってしまった場合他にしたいことはあるのか、もしお金を気にしなくて良かったら何をやりたいか等の質問を通じて人生をリフレーミングしていきます。

会社員生活においては目の前の仕事に日々全力で打ち込むあまり、一歩立ち止まってこうした人生の本質的なテーマを真剣に考える機会がほぼ無かった為、非常に貴重で有意義な時間となりました。また、ビジネススクール生活において日常的にソーシャルに割く時間をあまり多くとることができなかったこともあり、同級生と青臭くあれやこれやと語り合う時間は大変楽しく実りの多いものとなりました。

Design Your Life – 兪源村の様子_CEIBS_池田
Design Your Life – 兪源村の様子

中国語学習

CEIBSでの学校生活は英語のみで大方問題なく過ごすことができますが、中国語ができるかどうかで様々な場面において入手できる情報量が大きく変わってきます。受験準備や仕事状況等による時間的制約は各人様々だとは思いますが、入学前から中国語学習を始めることを強くお勧めします。

私も留学が決まる迄中国語はゼロの状態でしたが、過去のトルコ留学時に語学の事前学習の重要さを痛感した経験もあり、語学はなるべく早い段階で基礎を固め、あとは現地で揉まれながら鍛錬するべきと思っていた為、渡中数か月前からオンラインで日々授業を受け、特にCEIBS入学直前は非常にインテンシブに中国語を学習していました(以下スケジュール御参考)。

<入学前>

語学習得に関する考え方は様々ですが、中国語の場合は先ずは発音を徹底的に訓練し、その後はインプット(単語と文法)の時間にコミット、残りは実践あるのみという考え方で進めました。入学直前期には、寝る時間以外全ての時間を中国語の発音習得と単語・言い回しの習得に費やしたといっても過言ではありません。

入学後は、1日3コマの必修科目の授業、企業プレゼンテーション、グループディスカッション、個人課題等が始まり時間調整が難しくなっていきましたが、そのような環境でも最初の内は朝・昼の時間(5:00-7:00自習、7:00-9:00及び13:00-14:00授業)を使い、平日最低4時間・週末含む1週間合計で40時間は中国語学習時間を作るようにしていました。HSK6級・HSK口語高等レベル達成後も様々な場面で中国人との交流を増やし、生の中国語を浴びる、自分からも発信することを心がけていました。

<Term 1例>

学外アクティビティ

前述の通り私は皆より期間が短い12ヵ月コースを選択していた為、残念ながら他の同級生たちと比べ学外アクティビティに積極的に参加できなかった方だと思いますが、その中でもメンターを通して参加したいくつかの企業訪問は非常に有意義なものでした。

授業の一環でも中国企業を訪問することはありますが、機会は限定的です。私はエネルギー関係の仕事をしていたこともあり上海のオイルメジャーで働く方にメンターになって頂いたご縁から、中国におけるエネルギー業界の生のお話を聞かせていただくこともできましたし、またメンター同士の繋がりで念願のアリババを訪問する機会にも恵まれました。世間でよく知られているアリペイ以外にe-commerceの海外展開に関する話が印象的でした。

同級生の中には、CEIBSの看板を活用して興味のある企業を飛び込み営業的に訪問し、主体的にネットワークを構築していく人たちもいて彼らの行動力やバイタリティにも非常に感銘を受けました。学外アクティビティは積極的且つ戦略的に活用していくべきだと思います。

Japan Night_CEIBS_池田
Japan Night

卒業後

私の場合は、少し特殊な事情があり1年目の夏休み前には北京へ移動し現地法人にて業務を行うことが予め決まっていた為就職活動はしていないのですが、CEIBSで「中国×MBA」に期待した当初の目的を果たせたか、またその後実務にどのように活かせたかという点を総括したいと思います。

【CEIBSのメリット】実務に活かせるハード・ソフトスキルの修得

中国理解の深化及びMBA留学に期待していたハードスキルのプログラム面については、概ね期待通りだったと思います。中国理解深化に関して、中国特有の諸ケースをビジネスフレームワークに当てはめ分析・議論することで理解を深めるとともに中国企業の国際化を学ぶ南京モジュール、中国のイノベーションについて学ぶ深センモジュールといった授業及び中国企業訪問を通して彼らの実情及び課題を肌感覚で感じることができたのは非常に良い経験でした。

ソフトスキルについては、全Termを通して常に少人数のディスカッショングループで外国人は自分だけという状況で1年間濃密な時間を過ごす中で、授業やフィールドワークを通して国際社会におけるコミュニケーション方法、リーダーシップの発揮方法の多様性等ソフト面で同級生から多くの刺激を受けました。また、当然ではありますが議論が白熱するとクラスメートたちの議論が遠慮なしに全て中国語になり、唯一の外国人としては孤独に取り残されてもおかしくない環境だったと思いますが、どんなに忙しくても中国語学習の時間を抽出し必死に喰らいついた経験は、実務開始後も客先との折衝の際等においても非常に活きていたと感じます。

【CEIBSのメリット】中国内でのブランド力&人的ネットワーク

人的ネットワークに関しては、今後も意識的にメンテナンス・拡大していくものだと思うので現時点での判断は難しいですが、北京での実務開始後はJV設立、特殊商品の金融取引方法といった具体的な内容から、最新中国ビジネストレンドのインサイトに至るまで、疑問が生じた際には中国各地にいる各方面で知見・経験のある大勢の同級生やOB・OG達にアドバイスをもらうことができ大変助かりました。また、中国企業の経営者の中にもCEIBS卒業生が多く、中国内でのCEIBSのブランド力は非常に強いので人脈構築の助けとなることもありました。

Shanghai Night @外灘_CEIBS_池田
Shanghai Night @外灘

「中国×MBA」・CEIBSで学ぶことのデメリットは?

一方で、上述した「中国×MBA」、CEIBSで学ぶことのメリットだけでなくデメリットについても認識しておく必要があると思います。CEIBSのカリキュラムは“China Depth, Global Breath”というスローガンに基づき、ケース・カリキュラム、教授のバックグラウンド、生徒のダイバーシティー等中国に偏りすぎず、他の海外諸国とのバランスをとることを目指して組まれてはいますが、良くも悪くも中国寄りの視点に偏っていくような傾向を感じました。

クラス全体における外国人比率は3割強ですが、実際はその中には華僑であったり、元々中国との関わりが強かった外国人であったりが多く含まれているような状況であり、所謂International MBAを想定して留学するとギャップがあまりに大きいと思います。

また、中国内でのブランド力とは裏腹に中国以外の国際社会における知名度、転職活動におけるブランドネームとしてはまだまだ発展の余地があるように感じます。更に外国人が中国現地就職する場合は、CEIBSというブランドネーム以外に中国語能力や前職のバックグラウンド等その他のハードルが一様に高いということも認識しなくてはいけません。

未来のアジアMBA生への応援メッセージ

CEIBSで送るビジネススクールライフは「中国×MBA」という特殊性が生じる故、万人受けする学校ではないと思います。

しかし、今後アジア、特に中国でのキャリアを想定しながら主体的に行動する人にとっては、個人としてのエッジを高めることができ、様々な有益な機会を提供してくれるプラットフォームであることは間違いありません。

ある同級生に言われて印象に残っている言葉の一つに「孔子の言う君子とは、道徳があり、立派な人という意味だけではない。自分のスタンダードを持ち、それに基づき判断ができる人」というものがあります。ビジネススクールライフは人によって多種多様ですが、自分のスタンダードを以て何を優先し、また同時に犠牲にするかを確りと決めることが非常に重要だと思います。

本体験談が皆様の選択の一助となることを願っております。最後までお読み頂き有難う御座いました。

<参考>留学費用

<留学費用>

※在学当時の留学費用概算、為替は2018年8月時点

<留学資金工面>

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