プロフィール
名前 | 酒谷 彰一 Shoichi Sakatani |
入学年齢 | 30歳 |
MBA | シンガポール国立大学(2019年12月卒業) |
学歴 | 東京大学 工学部(2011年3月卒業) |
職歴 | ㈱日本取引所グループ 上場審査部 |
留学方法 | 社費 |
海外経験 | なし |
IELTS | Overall 7.0 (L7.0/R8.0/W7.0/S6.5) |
GMAT | Total 640 (Q49/V28/AWA4.0) |
入学前
アジアMBAを志した理由
私は2011年に東京証券取引所(現 日本取引所グループ)に入社し、上場審査部にて東証市場への新規上場審査を担当していました。そのなかで、経営の視点を持たない自分が企業の審査を行うことに一抹の違和感を感じ、一度プレイヤー側の視点に立ってみたいと考えていました。
また当時、会社としてはアジアNo.1の取引所になるために様々な国際業務を推進しており、自分もその輪に加わりたいと思っていましたが、社内には海外経験・英語力に長けた同僚が多くいたため、純ドメで英語キャラでもない私にはチャンスが回ってきそうにありませんでした。この状況を打破するための手段としてアジアへの社費MBAを志し、2度目の応募で社費派遣が認められました。
志望先、留学準備について
アジアMBAの場合は学校名よりも自分の注力したい地域を決めることが先決と考え、私は特に今後経済環境の大きな変化が見込まれる東南アジア・インドにベットすべくシンガポールを第一志望としました。その中でNUSを選んだのは、ランキングの高さや知名度に加え、1年半という他校より長い期間において、腰を据えて学内外での学び・経験が得られると期待したためです(後から振り返ってもこの判断は正解でした)。最終的にはキャンパスビジットを行い、ここで学びたいという漫然とした憧れを確信に変えて本格的な受験準備を開始しました。
幸いにも私の場合約1年の準備時間があり、上記のIELTS/GMATの点数も入学前年の夏頃に取得できたのですが、その後業務繁忙のため夏~秋にかけて留学準備に全く時間を割けず、漫然とした不安を抱える日々が続きました。結果的には問題なかったのですが、十分な情報が無いなかで準備が進まないと精神的な負荷になりますので、このサイトや各校の日本人サイト、卒業生の声等を通じて、良質な情報を積極的に取得されることをお勧めします。
在学中
たくさん失敗したMBA留学
入学直後のオリエンテーションで、突然スピーチしろと名指しされ同級生全員の前で失態を晒したところから私の留学生活がスタートしました。直後はかなり凹みましたが、ここで立ち止まってもシンガポールに来た意味が無いと開き直り、前向きなアクションを起こそうと決意しました。授業で前方に座り発言の機会を伺ったり、自分から志願して講堂でプレゼンを行ったり、ジャパントリップ(後述)を企画したりするなかで多くの失敗もしましたが、最終的にはクラスメイトとの信頼関係を築き、また入学当初の議論で全く歯が立たなかった級友達と対等に議論できるようになったことが私の大きな自信となりました。
クラスについて
クラスはフルタイム約100名中インド人・中国人で半分弱を占め、その他にもアジア各国出身の生徒が揃っておりまさにアジアの縮図といった様相を呈しています(他のアジアMBAと比較してもその傾向は強いと思います)。学校側もアジアフォーカスのプログラムであることを謳っており、授業において意図的にアジア企業の事例が多く盛り込まれています。授業中は出身国の学生が自らの体験に基づく意見を披露するため、NUSMBAでは机上の議論ではない活きたディスカッションに参加することができます。
【印象に残っている授業①】“Asian business environment”
アジア各国のビジネス環境について議論を行うNUSの名物授業のひとつであり、毎回楽しく参加することができました。アジアのローカル企業がGAFAをはじめとするグローバル企業に打ち勝つための戦略の一例として、インドネシアのライドシェア企業GOJEK社を題材に議論を行い、対象市場のリソースや制約条件に即した事業を展開すること、また当局と利害関係を一致させコラボレーションすることの重要性等を学べたことが目から鱗でした。また本授業ではトヨタ自動車のアジア統括会社社長もゲストスピーカーとして来校し、アジア各国における消費者需要について講義をいただきました。やはり「天下のトヨタ」であり、各国の生徒が神妙な面持ちで授業に参加していたことが印象的でした。
【印象に残っている授業②】“Managing International Value Chains”
本授業はBBCにコメンテーターとしても出演する著名教授が担当する授業です。ちょうど米国によるファーウェイへの制裁が報道され始めた頃でもあり、制裁実施を踏まえてファーウェイはサプライチェーンをどのように変更すべきかという点について、白熱した議論が行われました。また印象的なエピソードとして、中国における知的財産権の模倣にどう対応するか?というテーマで議論が行われた際、中国人から強い反論(抗議?)が行われたり一部学生は授業をボイコットしたりするなど、クラスルームが現在の国際議論の場の縮図になっているような感覚を覚え、ひとりで勝手に興奮しておりました。(基本的には皆国籍に関わらず仲が良いです、念のため…笑)
課外活動について
前述のとおりNUSは約1年半(標準期間。短縮・延長は可能)のプログラムであり、授業以外にも自らのモチベーションに応じて課外活動に十分な時間を割くことができます。
私も、1学期は時間を工面してクラスメイトとの飲み会等親交の場に極力参加するようにし、2学期以降は投資ファンドでのインターンシップ、ジャパントリップの企画運営、ケースコンペへの参加、ケーススタディ執筆、米国公認会計士試験の学習など、人生で今しかできないことに積極的に取り組みました。
ジャパントリップについて
2019年5月に実施したジャパントリップは、運営リーダーとして無事成功裏に終えることができました。本件は元々有志による自主的なイベントの予定でしたが、MBAオフィスに話を通した結果、学生間のコンペを経て大学公式の行事として開催するに至り、企業訪問や現地ネットワーキング等を行いました。この活動はクラスメイトに対してリーダーシップを取れる貴重な機会となり、準備・運営が非常に大変だった分得るものも大きく留学生活で一番の思い出となりました。
・ジャパントリップの活動記録の様子は、こちら↓の動画をご参照ください
交換留学について
NUSは交換留学提携先を豊富にもつことが強みであり、私も最終学期にはロンドンビジネススクールに交換留学しファイナンス中心に授業を取りました。最終学期に仲良し同級生の輪から離れ「交換留学生のアジア人」というマイノリティ環境に飛び込んだことで、正直大変と感じることも多かったのですが、留学生活最後にまたガツンと刺激を受けられたことは貴重な経験になりました。そうそう、授業の合間を縫って欧州各国を渡り歩けたことも忘れてはいけない大きな交換留学の利点です。(滞在先や飛行機内で課題をやったこともしばしば…)
全体スケジュール
<取得コース数>
各タームで取得したコース数
<忙しさ度合>
各ターム毎費やした時間を%で表示
卒業後
社費留学後そのままシンガポール赴任
卒業後は派遣元に戻り、現在は東証シンガポール支店の副支店長として、APAC地域の投資家および企業の新規開拓/RM業務に従事しております。特に私個人のミッションとしては、アジア企業の東証上場サポートおよびIPOエコシステムの確立に注力しており、3年後にはより多くの企業が東証上場を目指すようになることで日本の証券市場のプレゼンスを高められるよう、ステークホルダーの皆様と日々協働しています。
なお私のように社費留学後にそのまま海外赴任となるケースは多くないと思われ、他社では帰任後にイメージと異なる業務に配属された結果、やむなく転職してしまう事例も聞いております。そんななかで私が海外赴任の機会を得たのはひとえに運とご縁によるものですが、留学中にクライアント候補を会社に紹介するなどしていたことが、結果的に効果的な「社内就活」になっていたのではないかと思っています。
私費の方の就職活動について多くは語れませんが、私の日本人同期が某トップ戦略コンサルティングファームに転職するなど、NUS(アジアMBA)がトップティア企業群からも年々注目を集めていることを感じています。
仕事に直結しているMBA人脈
「実際MBAは仕事に役立っていますか?」という質問に対して、私は大きな声でYESと答えます。特に新規コンタクトを得る際に留学時代の人脈が効果的に機能しており、象徴的な事例として、シンガポールの政府系機関に就職した同級生経由で同機関とのコンタクトを得ることができました。またNUSMBAの後輩(日本人)経由で当地のVCに繋がるなど、日本人学生数が多いNUSならではのメリットも享受しております。更に実際にクライアントと折衝する際にもNUSMBAの肩書はフックとして有効であり、「アジアにコミットしているヤツ」と認知されることで無条件で一定の信頼を置いてもらえることを非常に有難く感じています。
<参考>「アジア現地で活躍する卒業生によるパネルディスカッション」に登壇した際のセミナーレポート記事はこちら
未来のアジアMBA生への応援メッセージ
これまでに述べた通り、私はMBA生活を通じて得難い経験をすることができ、特にキャリア面においてはMBA留学により新たな世界を切り開くことができました。
なお、良いことをつらつらと書いてきましたが、当然全ての物事にはトレードオフの関係があります。MBAに関していえば、自分のお金・時間の投資はさることながら、ご家族や周囲の方々の環境変化等のデメリットもあるのは事実です。MBAを絶対視することなく、一度自分の人生で大事なものを天秤にかけたうえで、MBA留学のご決断をされると良いのではないかと思います。
日本人アジアMBA生のコミュニティが広がると嬉しく思いますので、私にお手伝いできることがあれば是非お知らせください!
<参考>留学費用
※在学当時の留学費用概算、為替は2020年7月現在のものを使用