【MBA留学体験記】清華大学 森川 貴之 <2019年入学>

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目次

プロフィール

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森川 貴之(もりかわ たかゆき)

大学卒業後、日系自動車部品メーカーに入社。ドイツ勤務、外資系自動車部品メーカーへの転職を経て、これまで完成車メーカー向けOEM製品の提案、次世代自動車向け車両アーキテクチャのコンサルティング、及びプロジェクトマネジメントに従事。2019年、清華大学Global MBAに私費留学し、2021年より外資系コンサルティングファームに入社。

入学前

Why China?

「市場機会」・「人」・「語学」の3つの観点。初めから中国大陸MBAを志望していた。

市場機会

人口No.1・GDP世界2位である中国は、ビジネスの震源地。自動車業界が大きく変わっている中、その中心市場は中国であり、2019年を皮切りに業界が大きく変わることを把握していたので、何としてでもその震源地に身を置いて、現地の肌感をつかみたいと考えていました。前職でも中国出張の機会はありましたが、私が求めていたのは一定期間、現地の生活を観察し理解を深める事。そういった意味で、会社に守られての訪中は望ましくなく、現地人と密に関わることのできる学生という立場がベストな解でした。

学部生時代に経験したカナダ留学の経験より、中国にはアグレッシブで優秀な人が多い印象を持っていました。以来、彼らと対峙し、協業・競合することが自身のモチベーションの一つとなっていた為、20代の内に競争の激しい中国大陸で自身を試したいと考えていました。

語学

中国コミュニティに入り込むには、中国語がマスト。また彼らと対峙する上では英語だけでは難しく、彼らの土台で勝つ必要があると考えていました。もともと中国語に興味があり学習していましたが、更なるブラッシュアップを求め、中国大陸、その中でも北京を第一志望としていました。

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Tsinghua MBA Welcome Galaにパフォーマーとして参加

Why Tsinghua?

「China Roots」「MITとのコラボ」の2点。

ポストMBAのキャリア選択に中国での就職も視野に入れていたことから、中国ビジネスの理解や中国で活躍する経営者層との繋がりを求めていました。中国企業にフォーカスしたビジネスケースはもちろん、清華大学では著名中国企業のエグゼクティブによる講義や企業訪問の機会を多く提供しており、自身のキャリア形成にベストと考えました。実際、中国版Uberと呼ばれるDiDi(滴滴出行)やByteDance (字节跳动)本社に訪問し、北京市の交通を制御する最新テクノロジーや今後の成長戦略について理解を深めました。

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Byte Dance北京本社へ企業訪問

一方、実際のビジネスの場では中国だけではなく、他国の市場や文化理解も欠かせません。清華大学はMIT Sloanとのパートナーシップを締結しており、MIT Sloanの教授陣による講義や、Study TripでMIT@Bostonに滞在しプロジェクトを行う機会がある為、米中に跨るビジネスのバランス感覚を身につけられると考えました。

あまり大きな声では言えませんが、上記2つのポイント以外の期待値として、政府とのつながりが挙げられます。中国政府機関主要人物の多くが清華大学の卒業生であることもあり、期待通りクラスメイトの多くが党員でした。これらの人脈は、今後中国と関わる上で何か助けになると期待しています。

在学中

全体スケジュール

清華大学Global MBAは、春・秋の2学期で構成されており、卒業には45単位以上を取得する必要があります。基本的に21ヵ月のプログラムですが、18ヶ月で卒業できるファーストトラックも用意されています。1年目のほとんどは必修科目であり、多くの選択科目は2年目からオープンとなります。また、清華大学Global MBAは世界各国のビジネススクールへ留学するパスも提供しており、2年目には多くの学生が交換留学に参加します。

<取得コース数>

各タームで取得したコース数

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<忙しさ度合>

各ターム毎費やした時間を%で表示

sem_体験記_森川_忙しさ度合い

【印象に残っている授業①】Management of Global Enterprise

MIT Sloan教授陣によるイノベーション企業に関する講義で、私が最も楽しみにしていた授業の1つです。MITが掲げるAction Learningメソッドをフルに活用し、1月2日の年明け直後にも関わらず、毎日大量のビジネスケースと多くのチームプロジェクトが課せられました。起業論を始め、IP StrategyやDisruptive Strategyについてビジネスケースを通して学び、最終的にはPlatform Businessについて、教授を仮想投資家に見立て、ピッチを行いました。授業の内容はもちろんエキサイティングでしたが、自身がリードしたチームプロジェクトでは、メンバーが極めてダイバーシティに富んでおり、落としどころを見つけることに大変苦労しました。最終的には、優秀なクラスメイトに助けられつつ、チームとしてアウトプットが出せましたが、色々な意味でMBAならではの臨場感・達成感を味わうことができました。

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授業最終日に教授を囲んで1枚

【印象に残っている授業②】Business Performance and Sustainability

中国要素を感じることができる授業。授業で扱うビジネスケースは清華大学MBA卒業生やプログラムに所縁のある経営者が教授陣と作成したもので、全て中国企業に関する内容でした。中には中国のSOE案件も含んでいました。どのトピックスも経営戦略に於けるSDGsの重要性に触れており、講義をして下さる中国企業のみならず、中国人クラスメイトもグリーンファイナンスやエクエーター原則等の重要性について熱く議論していたことから、中国がSDGsをイノベーション促進の手段として真剣に捉えていることを改めて理解しました。

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48時間SDGs Hackathonに参加

クラスメイトとの思い出 – 日本人唯一の同期との絆

清華大学Global MBA唯一の日本人同期である、Akihiroさん(ニックネーム:Akiさん)に要所要所でサポート頂いたことです。Akiさんは公認会計士であることから、特にアカウンティングやコーポレートファイナンスで個別サポートを頂きました。テスト期間は深夜までマンツーマンでこれ以上ない程噛み砕いて分かりやすく講義頂きました。そのあとにAkiさんの好物である火鍋を2人で食べていたあの時期がとても懐かしいです。

日本人クラスメイトとの思い出は海外MBAを語る上では望ましくないかもしれませんが、彼のサポートなくして、私のMBA生活はないと思います。ハードスキルだけではなく、日本と中国の違いや、今後のキャリア、人生観等、Akiさんとは多くのことを語りました。今後も清華大学MBA同期としてだけではなく、人生、キャリアの先輩として、定期的にキャッチアップできたらと考えています。

自信を得る事ができたエピソード – クラス内総合評価で上位獲得

成績・貢献度総合評価で上位になったこと。

1年目が終わったタイミングで、交換留学の選考が始まります。選考は総合評価上位順に志望校を選択でき、その評価軸は英語・成績・クラス貢献度の3つ。尚、クラス貢献度はクラスメイトの投票により決まります。Part Time MBA含め150人程の希望者がいた中で、私の総合順位は奇跡的に9位であり、第一志望のコーネル大学に交換留学が決まりました。

英語・成績は飛び抜けて出来が良いとは言い難かった為、クラス貢献度の評価が高かったものと思われます。それまで、クラスに於ける自身の発言の質や回数に情けなさを感じたり、人より予習復習に時間を要し課外活動をエンジョイする時間を十分に確保できなかったりして自分に嫌気がさすこともありましたが、この出来事は、そんな中でもクラス委員をやったり、ディスカッションのファシリテーションを務めたり、自身が貢献できる場面を考え作ってきた努力が報われた瞬間でした。

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Bootcampでのチームフォト

一番印象に残っている一言 – 「Takaはまるで中国人の様で接しやすい」

中国人のクラスメイトに言われた、「Takaはまるで中国人の様で接しやすい」という言葉。

仕事で中国語を使っていたこともあり、MBA入学前から中国語での日常会話に不自由はしていませんでした。ただ、この言葉の本質は言語の優位性にあるのではなく、それらに中国文化や中国人に興味を持ち、積極的に関わる私の姿勢にあります。(加えて、顔や髪形が中国人寄りであることも功を奏したかもしれません) これは、中国に限らず、何かを学んだり、何かに変化を与えたりするときに必要なスキルだと考えています。グローバルな社会に於いて、異なることを異質なものして取り除くのではなく、まずは受け入れてその違いについて理解を深める姿勢も重要だと考えています。これにより、中国人のパーティに外国人私1人で参加したり、良好な関係構築によりクラスでの貢献度を高めたりする事に繋がりました。一方で、International Studentsにとっても、私は接しやすい、相談しやすい存在だったと思います。

私も中国語には日々苦労していましたが、非ネイティブだからこそ彼らに共感できる部分もあり、そういった面で、日本人のくせに中国にやたら興味を持っている面白い人として外国人クラスメイトに頼られることもありました。例えば、タピオカ注文時のトッピング解説や、外卖(フードデリバリー)配達員を教室まで電話で案内する等、中国人に聞けばすぐに解決する案件ですがちょっと気が引ける、といったような場面で外国人クラスメイトから私は重宝されていました。

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中国人クラスメイトとのディナー

ここが我が校の自慢!- 豪華な著名ビジネスリーダーが来校

著名人・ビジネスリーダーとの繋がり。清華大学は中国、アジアを代表する総合大学なだけあり、MBA、他学部問わず、大変豪華な著名人が来校し講義を行います。MBAではこれまで、Apple CEOのTim Cook氏や、Alibaba創設者のJack Ma氏、Tesla CEOのElon Musk氏等、世界のビジネスリーダーが来校しています。私が在学期間中には、2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野氏や日本の元首相である福田氏が来校し他学部で講義をしていました。

総括

MBAのメリット

経験に基づくソフトスキルが伸びたと思います。具体的には、自己理解の深化と度胸を鍛えることができました。当然、経済学やファイナンス等のハードスキルも磨かれますが、実践という観点ではこれから更に磨いていく必要があります。

MBAの2年間で具体的に何か実学が身についたということは意外と多くなく、倫理観や自分の存在意義について考えを深めることを学んだ、と言いますかその機会を得ました。異なるキャリアやバックグラウンドを持つクラスメイトや教授と切磋琢磨することで、自分自身の今後について、人生を通して何を成し遂げたいのかを考える貴重な時間となりました。

また、ある程度の度胸は身についたと思います。もともとMBA進学の理由の一つに挫折を経験することを掲げていましたが、実際は想像以上に追い込まれ苦しかったです。当たり前ですが、教授にcold callで突然発言を求められたり、クラスメイト80人の前で急遽プレゼンを無茶振りされたりして、失敗や恥をかくことも少なくありませんでした。ただ今思い返すとチャレンジする機会が日々与えられていたのは、重要な経験であり、これにより人として強くなれたと思います。どんなにかっよく振る舞って強がっていても、勝負を決める際には身ぐるみを全部剥がされ人前でグリルされる経験をしたからこそ、改めて本質的な人間力が重要だと理解しました。

当然ビジネスの場では、用意周到で臨みこのような恥ずかしい失敗をできる限り無くす必要がありますが、この2年間で得た自分を見直す貴重な時間や、MBAでの挫折経験で得たタフネスさは、この破壊的な変化が求められる時代に於いて、今後必ず活きてくると考えています。

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Ice Breaking Party

MBAのデメリット

個人的なデメリットとしては、キャリアブランクです。これは私費留学である以上、トレードオフの関係にあるとも言えますが、特に卒業後の年齢が30歳を超える人にはある程度マイナスに働く可能性もあると感じました。私は卒業時、丁度30歳ですが、この年齢は業界を変える際、ポテンシャル採用ギリギリ、企業によってはポテンシャルを採らないところもあるので、日本でキャリアチェンジをする場合には、年齢がネックになることもあると感じました。

未来のアジア MBA 生への応援メッセージ

人生のタイミングによって各項目の優先順位は変わります。私は今最も勢いのある国、中国でのMBA生活やそこで出会った方々との交流を通じてキャリアの選択肢を広げることができました。

MBAが唯一の解ではないと思いますが、ご自身にとってMBAの優先順位が高い限りは、決して諦めずに挑戦し続けて欲しいです。特にスコアが出ないときは苦しいですが、アジアMBAに関してはアドミッションとのコネクションや在校生・卒業生との関係作りが意外と重要だったりしますので、モチベーション維持も兼ねてぜひそちらにも注力頂き、目標達成を遂げて頂きたいです。私にお手伝いできることがあれば是非お知らせください。

清華大学MBAにご興味をお持ちの方は、昨年立ち上げた日本人向け非公式サイトもご参照頂けますと幸いです。

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清華大学始業式
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