【MBA留学体験記】香港大学(HKU)李 暢 <2017年入学>

 

プロフィール

 

名前 :    李暢 Li Chang

入学時年齢 : 28歳

入学前学歴 : 立命館アジア太平洋大学アジア太平洋マネジメント学部 専攻:管理会計(2011 年 9 月卒業)

職歴 :    (現職)Plug and Play Japan、Insurtechチーム

       (MBA 前)大手生命保険会社運用審査部 アメリカ現地法人 収益管理部  <MBA前:勤務年数5 年2ヶ月>

留学方法 :  私費、単身

海外経験 :   (MBA 前) 中国生まれ育ち、大学で来日。入社後ニューヨークで1年間勤務経験あり

TOEFL:   Total 98

GMAT :   Total 640

 

 

中国出身なのに中国を知らない(なぜ欧米ではなくアジアなのか)

 

2014年に前職の保険会社のクロスボーダーM&Aに携わり、1年間ニューヨークで働いていました。その当時、日本の大手生命保険会社は相次いでアメリカで買収を行い、業界で話題になりました。一方で、中国の保険系PEファームFosun(復星)は、アメリカですでに投資銀行に一目置かれる存在になっており、2014年に中国のAnbang(安邦)保険がニューヨークのWaldorf-Astoriaホテルを買収した事も大きなニュースになりました(その後売却する羽目になりましたが)。ニューヨーク在住時、仕事でWall-streetに行くことも多く、Alibabaを始め、いくつかの中国企業のニューヨークでの上場を間近で見ることができました。日本で働いていた当時は、特に保険業界においては中国が遅れているという見方を持っていましたが、ニューヨークにて中国の勢いとスピードを肌で感じました。

 

私は中国四川省出身で、大学の時に来日し、そのまま新卒で日本で就職しました。就職後も、年に一回は四川に帰省しています。今、四川では買い物は、現金ではなく、Wechat Pay(QR・バーコード決済サービス)を皆使っています。街中には、ofoやMobikeと言ったシェア自転車が溢れています。そして、いつの間にか中国で働いている高校の同級生に給料が追い越されていました。

 

大学から中国を離れ数年、今の中国で何が流行っているのか、小さいときに使っていたチャットツールのTencentがどこまで大きな企業になったのか、あまりのスピードの速い変化に、私は中国出身であるにもかかわらず、中国が全くわからなくなっていました。中国の今を知りたい、中国でのネットワークも作りたいと思い、“中国のMBA”に進学することを決意しました。

 

中国出身者で海外でも仕事をした経験より、「中国の実力よりネットワークを重視するところ」「ルールを守りたがらないところ」といった遅れている商習慣をよく知る立場だからこそ、中国のことを丁度良い距離感で学べる香港を選びました。

 

香港大学を選んだ理由のもう一つは、合計14か月のプログラムのうち、一つのセメスターはコロンビア大学で学べることです。ニューヨークで働いた経験があるからこそ、金融の中心と言えばニューヨークというのは今でも変わっていないことを実感し、効率良く中国とニューヨーク両方で学ぶことができ、かつ人脈を作れることに魅力を感じ、香港大学のMBAプログラムに決めました。

 

コロンビア交換のクラスメートとニューヨークで

 

 

全体スケジュール

 

<取得コース数>

各タームで取得したコース数

 

 

<忙しさ度合>

各ターム毎費やした時間を%で表示

 

 

Business Lab<印象に残っている授業①>

 

Business Labとは、「起業プロジェクト」を実際にやってみることで、「起業」を体系的に理解することができる授業です。最初は漠然としたビジネスアイディアから、最後の授業では香港や中国の有名なVCの前でPitchするまで4ヵ月にわたり、会社を作るために考える必要のある様々なことを一通り実践の形で学んでいきます。

 

私が最初に発表したビジネスアイディアは傘のシェアリング事業をコンセプトにし、エンドユーザーに無料な傘レンタルサービスを提供、スポンサー企業からお金やスペースをもらう代わりに傘に広告を載せたり、来客を促進を行うビジネスモデルでした。私以外に3人がチームに参加してくれて、一人は前職はM&A専門のコンサルティング出身で収益モデルを担当し、もう一人はマーケティングの経験があるのでマーケティングを担当してくれました。

 

皆とビジネスアイディアを発表しあい、面白いね!良いね!と言ってもらえることは、とても嬉しく、ワクワクします。しかし、実際は地道で煩雑な準備作業、チームメンバー意見の不一致、資金調達の難しさと費用かかる面が多々あることをこの授業を通じて学びました。

 

私のチームはBusiness Labのプロジェクトを通じて以下のことを行いました:

  • アンケートを用いた市場調査
  • 競合他社分析(深センでの実態調査)
  • 地下鉄駅やコンビニなど、傘を置きたい場所、傘の利用者が多い場所の分析を行うための実地調査
  • レンタル傘の本数、利用者数分析を行い、ビジネススケールの調整
  • 技術、傘提供者への価格交渉
  • 収益モデルの作成

などなど、…授業は毎週金曜日の夜だけでしたが、これらの作業をするのに、週末や他の授業の合間も利用し、プロジェクトを進めました。時間はかかり、時に疲労感もありましたが、チーム全体で一緒に議論したり、実地調査を行ったりと、自分のビジネスモデルがどんどん進化していくのが目に見えて、他では味わえない充実感がありました。

 

悪魔でもプロジェクトで、授業の一環と思われてしまうかもしれませんが、私のクラスでは最終発表1位を取ったチームは実際に事業化しています。過去にもこの授業を通じて実際に起業した先輩が多くいます。起業に興味があって、アジアのMBAを考えている人がいれば、香港大学のこの授業をとてもお勧めします。

 

受賞チーム

 

 

Fintech<印象に残っている授業②>

 

Fintechの授業は、1日8時間×4日間の集中講義形式でした。うち1日は、Insurtech(Insurance×Technology)がテーマで、SpeakerがあるシリコンバレーInsurtech Startupのアジア担当の人でした。授業の後その方と個別にお話しする機会があり、丁度日本市場への進出を始めたところとの話を聞き、その会社の日本進出に手伝うことになりました。その後、紆余曲折ありましたが、MBA卒業後私はVC /アクセラレータに入社し、スタートアップを支援する仕事に着きました。そしてこのFintechの授業で出会ったInsuretechのスタートアップは、私の現職のアクセラレータープログラムに採択され、VC /アクセラレータという立場で支援を行っています。

 

 

インターンシップでPE/スタートアップにチャレンジ

 

恥ずかしながら、私は決して勉強が得意な方ではないと思います。MBAに進学した時に、やってみたいことをとことんやってみることを決めました。M&A、Entrepreneurship、保険に興味があったので、将来投資や起業をしてみたいと思いましたが、仕事を辞めていきなり始めるにはリスクが大きいと思い、MBA在学中にPE、スタートアップでまずはインターンにチャレンジしました。

インターンを通じて得たネットワークは今でもとても仕事に役に立っています。また、インターンを通じて自分が納得する転職につなげることができました。

 

 

優秀なクラスメートの中でクラス代表を経験

 

大手企業では若い年次にリーダーを務めることがなかなかないので、MBA中にリーダーシップを磨きたく、クラスの代表を務めました。クラスでは自分より優秀な人ばかりの中で、決して上手く代表を務められたと言えませんが、改めて自分の長所/短所を見つめなおすことができ、貴重な経験ができました。

 

クラス代表のメインな仕事はパーティーの開催:クリスマスパーティーの様子

 

 

MBA World Summit

 

MBA在学中にMBA World Summitを参加しました。このSummitは世界中のMBA学生を集め、毎年違う国で開催されていますが、私が参加した2018年は南アフリカで開催されました。大自然がとても綺麗でしたが、貧富の差と人種差別を毎日街中で目にしました。

 

Summitでの、南アフリカの学生のスピーチがとても印象的でした。

「我々はなぜここにいるんでしょうか?おそらく、多くの人は自分の努力、向上心と頭の良さで世界中のトップビジネススクールに進学できたと思っていませんか。しかし本当にそうでしょうか? 皆さんの生まれ育った環境が、今日MBAに来れた大きな要因だと私は思います。

南アフリカでは大学が限られていて、Township(黒人が住む貧しいコミュニティ)の子供達は高い質の教育を受けることがとても難しいのです。我々が教育を受ける機会は世界中の皆に平等に与えられている訳ではない、という事を忘れてはいけないのです……だからこそ、様々な領域でリーダーになる皆さんに南アフリカに来てもらうことには、大きな意味があると思っています。是非、皆さんにリーダーの責任として、この事を考えて欲しいと思います。」

 

MBAというステータスを入手すれば、就職に有利だったり、キャリアップも出来たりします。特に私費の場合、金銭的負担は大きく、リターンを求めるのは当たり前です。私はあまり競争が好きではない性格でもあり、MBAのアグレシッブな文化にどこか慣れない部分がありました。しかし、World Summitの経験はどこかホッとできる部分がありました。私にとってのMBAは、1年間学生としてキャンパスに戻れる本当に贅沢な時間で、人生を豊かにしてくれました。

 

香港大学3人がMBA World Summitを参加する様子

 

 

未来のアジアMBA生への応援メッセージ

 

MBAに入学した時、先輩達に色々と相談できる座談会での一コマを今でも覚えてます。先輩に「Business Labを受講してみたいですが、とても時間とエネルギーが必要と聞いてます。ただ、MBA中他に色々なこともやりたいですし、受講すべきかどうか迷ってます。」と聞きました。「今の質問にすでに答えが出ていると思いますが、時間や資源は常に限られていて、自分が本当にやりたいことに使うべきです。」との返答を頂きました。

 

とても心に響いたので、この言葉を皆さんにも送りたいと思います。MBAに行くかどうか、MBA中に何をするか、自分が本当にやりたいことを見極めて、大事な時間や資源を使ってください。

 

キャンパス内で一番のお気に入りスポット。良く長椅子に座って緑を見ながらSubwayのサンドイッチを食べました

 

 

<参考>留学費用

 

<留学費用>

 

<留学資金工面>

 

※在学当時の留学費用概算、為替は2019年2月現在のものを使用

 

 

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