本日はどのMBAでも必須科目として取得しなければならないFinanceの授業の中で、シンガポール国立大学(NUS)の“Financial Management”をご紹介します。
概要
Columbia University で経済学のPhDを終了し、その後ECBやBISでEconomistとして実務経験のある教授のもとでFinanceに関する基礎的な知識、応用としてやや実務的なFinanceの知識も含め学びます。
授業の形式
基本的には教授の作ったスライドに沿って講義形式で授業が進んでいきます。このスライドは基本的な概念の説明から実務におけるファイナンス、応用的な内容が網羅されており、教授のユーモアも合わさり飽きることなく3時間が過ぎます。
スライド毎に教授が分からないところがないか生徒に毎回確認するため、ペースが早すぎるということもありません。また、ディスカッションやコールドコールといったものはなく、プレゼンもありません。
学習内容
前半:
現在価値・将来価値の概念や計算の仕方といった基本的なFinanceの理論について学び、プロジェクトの価値算定の方法について学びます。また、投資タイミングの判断やインフレーションの与える影響、減価償却手法の違いが決算に与える影響なども同時に学びます。
中盤:
前半で学んだ知識をもとに、二つの基本的なアセット(株式・債券)について学びます。株式についてはDCFを使った株価算定方法や利回り、株価評価の様々な指標について(EPS・BPS・Dividend yieldなど)を学びます。それに加え、債券について基本的な知識に加えModified DurationやYield to Maturity等の計算方法や債券の価値算定、クレジットによる評価などを学びます。
後半:
ポートフォリオ理論や行動ファイナンスといったやや応用的な内容を学びます。具体的には実際のマーケットの数値を使いながらCAPM、βなどの計算を行い株式ごとの評価を行います。他にも企業、プロジェクトにおけるCost of Capitalの算定やDividend・Repurchaseが株価に与える影響、IPOやunderwritingについて、種類株式についてなどと幅広く学びます。
課題
グループは各自自由に4人~6人程度で組みます。
課題は毎週授業後に出され、基本的には指定されたテキストの課題を解くこととなります。それに加え、Excelを使い実際のマーケットデータを使い数値を計算させることや、著名投資家のリターンとインデックスを比較させるなど、授業の内容を一層理解しやすくする課題なども出されます。
最終課題のみケーススタディ形式となっており、実際の上場会社について、上場する市場を選んだ理由、上場市場による違い、デュアルクラスストックなどについて調べ提出する形となっています。このケースについてはアジアMBAらしく、中国のITジャイアントAlibabaが選ばれました。
まとめ
基礎的なFinanceの知識を取り扱う授業ではあるものの、試験範囲外として実際に金融機関の運用規制(BIS規制)の話や、年金運用の話なども盛り込む回もあり、Finance経験者でも学ぶことの多く、教授のユーモアや授業構成なども相まってFinanceのバックグラウンドの有無にかかわらず楽しむことのできる授業です。
特にこの授業のSlideは非常に凝っており、Slideを読み直せば授業自体もきちんと理解できるうえ、課題も理解を深めるような問題のみ抽出して出されるため、ストレスを感じず、それでも簡単すぎずといった塩梅で挑戦できるように工夫されており、非常にクオリティの高い授業の1つです。