【アジアMBAの授業】香港科技大学(HKUST)Managerial Microeconomics & Strategy and Organization編

 

「アジアMBAの授業」シリーズ連載、今回は香港科技大学(HKUST) Class of 2019 吉川周佑さんに、吉川さんにとって最も印象の深い教授という、Prof. Xinyu HUAの”Managerial Microeconomics”と”Strategy and Organization”の授業についてご紹介頂きます。

 

吉川 周佑(よしかわしゅうすけ)

電力会社、大手監査法人を経て日系大手人材メディア会社に入社。同社の株式上場プロジェクトに参画し、主に海外子会社の内部統制整備、会計、業務プロセスの導入を担当。株式上場した後は同グループ全体のコンプライアンスマネジャーとして、リスクマネジメント、コンプライアンス、内部統制を所管。香港科学技術大学(HKUST)へ留学しMBAを取得した後、東京で会計系コンサルティングファームを設立。公認会計士。

 

年度によりカリキュラムは若干変化するものの、その他の多くのMBAプログラムと同様、HKUSTの授業は必修科目と選択科目で分かれています。欧米型の2年間プログラムと異なり、HKUSTでは12~16ヶ月でプログラムが完結するため、全体としてスケジュールが厳しく、特にプログラムの前半は複数の必修科目で1週間のスケジュールがほぼ埋められます。

 

 

Managerial Microeconomics

 

その必修科目の一つが、上述のManagerial Microeconomicsです。ミクロ経済学ですね。他の多くの授業と同じく、ケースを用いた授業が中心です。毎週課題としてケースが出されます。個人課題の場合もあれば、複数名のグループとして課題の提出を求められる場合もあります。グループごとに異なる立場の主張を採り、プレゼン対決またはディベート対決のような課題もあります。

 

どれも大変学びが多く刺激的ではあるのですが、それだけでは他の多くの授業と大差ありません。実際のところ、私は経済学部の出身なので、知識そのものとしては古い記憶の復習としての学びこそあったものの、全くの新しい発見があったわけでもありません。そうした中で今回敢えてこの授業をご紹介したいと強く思った理由は、授業で取り扱う内容そのものではなく、担当教授であるProf. Xinyuの非常に高いファシリテーション能力にあります。

 

MBA生活の醍醐味は多々ありますが、学業面に関して言えば、授業の構成が日本の大学等でよくある一方的な「講義」形式ではなく、原則としてクラス全体を巻き込んだ、教授と学生たちとの双方向のコミュニケーションを前提に成り立っていることも、その魅力の一つではないでしょうか。双方向のコミュニケーションを前提とした授業だからこそ、国籍、年齢、文化、ビジネス経験等、あらゆる面で多様な学生が集まるクラスにおいて、それぞれの学生がそれぞれに異なるバックグラウンドをもとに発言をし、自らの知識、経験、観点を寄せ合うことで、教科書を読むだけでは決して得ることのできない、他にはない「財産」を得ることができると思っております。

 

Prof. Xinyuに話を戻しましょう。彼はこの「クラス全体から多様な意見を引き出す」ということに非常に長けております。教室内で発言しやすい空気を醸成することは勿論ですが、学生から出された様々な意見に関して、たとえそれが一見するとテーマから外れたものであったとしても、必ずそれを上手く拾い、テーマに関連付けて、クラス全体でのディスカッションを加速度的に膨らませていきます。そして多岐に拡散した議論は最終的に上手く収束され、元々のテーマにおける意図された学び(Key Takeaway)へと繋がります。

 

 

 

Strategy and Organization

 

彼のファシリテーション力は、必修科目であるManagerial Microeconomicsに留まらず、選択科目でありより実践的なStrategy and Organizationにおいて真価を発揮します。Strategy and Organizationでは、文字通り、「戦略と組織」を扱います。「組織」として取り扱う範囲は、いわゆる企業体としての組織論のみならず、人事領域にまで及びます。そしてこうした学問の性質上、ほとんどの場合に「正解」がない中で、ケースを中心にした実例をもとに授業が展開されます。

 

具体例を挙げましょう。ケースの一つとして、中国が世界に誇るオンラインマーケット事業会社であるAlibaba社について、その組織設計の妙について議論する機会がありました。題材となるケースそのものは過去の事実を元に記述されてはいるものの、Alibaba社は現在進行形で急成長中の企業であるため、過去の組織設計に関する意思決定について、現時点で絶対的な「正解」はありえません。

 

クラスメートの中には、たとえば中国企業の企業文化に詳しい学生、グローバルに展開するIT企業の組織設計に詳しい学生、あるいはコンサルタントとして数々のグローバル企業の支援経験の豊富な学生がいます。加えて、専門領域として人事に詳しい学生、ファイナンス、会計に強い学生、オペレーションの設計に強い学生等、とにかく様々なバックグラウンドを持つ学生がいます。こうした多様な学生が、自らの持つ独自の観点を元に、急成長を続ける巨大な中国のIT企業の組織と戦略に関する意思決定ついて議論を講じることになります。想像が付きますでしょうか?議論は非常に多岐に亘り、ともすると拡散しすぎて収集が付かなくなるところですが、そこは例によってProf. Xinyuの強力なファシリテーションによりスムーズに展開され、やがて学びへと収束していきます。

 

Strategy and Organizationでは、Alibaba以外にもP&GやUNIQLOなど、数多くのメジャーなグローバル企業を扱います。また香港という地理的な特性を活かし、中国企業やその他のアジア企業についても、人事、組織といったテーマについて、それぞれの企業戦略と関連付けながら授業が進んでいきます。その一環で、企業買収後の統合(PMI: Post Merger Integration)についても、成功事例、失敗事例ともに多く取り扱われます。特に私自身、留学以前に前職でクロスボーダーM&AのPMIを担当していた経験から、様々な実例から学ぶことは大変興味深く、印象的かつ最も学びの多い授業でした。

 

 

終わりに

 

さて、ここまでHKUSTの教授であるProf. Xinyuについて、その担当するManagerial MicroeconomicsとStrategy and Organizationの二つの授業を具体例に挙げご紹介しました。しかしながら、この「ファシリテーション能力」というものは、如何せん形のないものですので、こうした言葉だけでは十分に伝わらないかもしれません。幸いなことに、今年の香港MBA3校 Campus Visit Tourでは、HKUSTへ訪問時にProf. XinyuのManagerial Microeconomicsに実際に参加する機会もあると聞いています。彼の授業がいかにエキサイティングで学びの深い授業であるか、是非ご自身で実際に体験してみてください。

 

<お知らせ>

“香港MBA3 校 Campus Visit Tour 2019″ 

9月3連休中、2019年9月22日(日)開催!

オプション企画として、本記事で吉川さんにご紹介頂いた香港科技大学(HKUST)の”Managerial Microeconomics”授業見学も可能です。奮ってご参加ください。

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