プロフィール
名前 : 石川 尚 Ishikawa Takashi
入学前学歴 : 筑波大学人間学類卒業(専攻:心理学)
職歴 : (現職)株式会社ファーストリテイリング
(MBA 前)株式会社ワークスアプリケーションズ、株式会社キューブシステム、海上自衛隊
留学方法 : 私費、単身
海外経験 : (MBA 前) 出張ベースで海外プロジェクトに参画
自己革新めざし巨大市場・中国にフォーカス[選んだ理由]
MBA 進学を決心したのは、キャリアの踊り場とも言える時期。自分の成長曲線が緩やかになってきているという閉塞感を感じていました。現場で改善を重ねる、社内で異動する、転職するなど、突破口になりそうな可能性を検討しましたが、最大のボトルネックは自分自身にあるのではと考えるに至りました。ビジネスに対する目線が低く、経営・事業レベルで課題を整理して解決する力を伸ばす必要がある。そのための最短距離がMBA 進学でした。成長意欲に突き動かされた留学で、卒業後の具体的なキャリアについては走りながら考えるつもりでした。
候補地は早い段階で中国に絞りました。マーケットの伸びしろが大きいのと、過去の旅行や仕事の経験から親近感を持っていたためです。留学は勉強だけでなく現地での生活体験が糧になりますから、おもしろいと感じられる土地で過ごしたい気持ちもありました。
最終的には出願先を長江商学院に一本化しました。一言で言うと最も「中国どっぷり」な学校だったからです。学生の中国人比率が6 ~ 8 割程度と高く現地のネットワークを広げるには最適な環境ですし、北京の人々は標準語を話すため中国語を学ぶにも良い土地です。一方で欧米で実績のある教授を招聘してグローバルな視点で捉えた中国ビジネスを世界に発信していこうとしている目線の高さにも魅かれました。
平日は新幹線で、休日はカフェで勉強[入学までの苦労]
受験を決意したタイミングが遅く、非常にタイトなスケジュールで受験しました。12 月に心を決め、1 月にエッセイと出願書類を準備。2月に出願。3 月に面接を受け仮合格。それからGMAT を受け始め6 月に最終合格でした。GMAT を後にして先にエッセイだけ出したのは、早期出願だと奨学金をもらえる可能性が高いと学校から案内されたからです。この間、ほぼ毎週泊り込みの出張があり、往復の新幹線の中で勉強していました。土日もカフェにこもってGMAT 対策。座ると眠くなるのでカウンター席で立ったまま過去問に取り組んでいた記憶があります。店員の皆さんから怪訝な目つきで見られていたと思います。
エッセイは、お正月にセブ島に短期留学してフィリピン人の先生に相談に乗ってもらいながら書きました。GMAT に関しては直前にSC(Sentence Correction)だけ予備校(Y.E.S)に通って対策を行いました。
全体スケジュール
便宜上、必修前半・後半、選択前半・後半と分けましたが、実際のスケジュールはもっと細分化されています。必修期は毎週月水金が終日、火木が半日のみの授業という構成です。これにグループワークや各種イベント、外国人留学生の場合は夜間中国語クラスが加わりますから、かなりの忙しさです。土日も半分は勉強しないと追いつきません。選択期は自己の都合と興味に応じて、柔軟にスケジュールを組むことができます。
<取得コース数>
各タームで取得したコース数
<忙しさ度合>
各ターム毎費やした時間を%で表示
看板教授の教える”Pricing Strategy”[印象的な授業①]
印象深い授業の1 つは、プライシング戦略の授業。顧客、競合、コストとの関係で価格が決定するメカニズムを明らかにするとともに、マーケティングのさまざまなツールを用いていかに最適な価格を実現するかを考える内容でした。
どちらかというと金融系に強い長江商学院ですが、この講義はマーケティング系の看板教授によるもので、非常にインタラクティブかつ中国企業のケースもあり、興味深かったです。中国人学生の議論から、「安かろう悪かろう」のビジネスモデルで低利益に甘んじている中国企業に対する問題意識を強烈に感じ取ることができました。
刺激的な米国研修プログラム[印象的な授業②]
2013 年から始まった試みで、6 月に2 週間半の日程で米国を訪問するプログラムです。ニューヨークでは約1 週間、提携するコロンビア大MBA の講義の受講と企業訪問、その後はグループごとの自由行動です。自由行動ではありますが、ビジネスカンファレンスの企画開催、訪問先での企業訪問を行う必要があります。私のグループは西海岸でKPCB というVC とGoogle、Linked-In を訪問し、シリコンバレーでは現地の投資家・起業家を招いたビジネスプラン・コンペを開催しました。米国における華僑ネットワークの広がりと、ショッピングモールにおける中国人クラスメートの購買力の強さを見せつけられました。
学校を代表してビジネスプランをプレゼン![自信を得たエピソード]
シリコンバレーのビジネスプラン・コンペで長江商学院代表としてプレゼンしたことが大きな自信につながりました。
私以外の発表者は全員現地からの参加者でGoogle やLinkedIn のエンジニア、審査員は米国展開している中関村発VC のパートナーたちでした。米国滞在中、毎晩プランを練って検討を繰り返し、できるだけの準備をしました。当日は発表の際に古いバージョンの資料を使ってしまうミスがあり、審査員から耳に痛い言葉ももらいましたが、伝えたいことは出し切り、別の参加者から「アメリカでやるなら一緒にやろう」と声をかけられたりもしました。
課題と可能性の両方を感じた貴重な体験で、何よりもチャレンジした自分に自信がついた一日でもありました。
インターンシップ[ここが自慢!①]
私の在学した期は春と夏にインターンシップのチャンスがあり、春にEMBA の卒業生(アーンスト・ヤングのパートナー)が募集したものに参加しました。就職につながるものではありませんでしたが、アカデミックな学習と実務を結びつける意味で非常に良い経験となりました。
夏のインターンは大規模で参加人数も多く、そのままインターン先に就職する学生もいます。また、一般企業のインターンとは別に、EMBA の卒業生が経営する企業における研修プログラムも用意されています。
交換留学[ここが自慢!②]
交換留学は卒業前に行くケースと後に行くケースの2 種類があります。
留学先は米国ならコロンビア大学やコーネル大学、欧州はEMLYON 経営大学院やIE ビジネススクール等と提携しています。早稲田大学や台湾大学を選ぶ学生もいます。期間は概ね4、5 カ月です。成績上位順で希望の学校を選ぶシステムになっており、米国MBA は人気で競争がありますが、それ以外はさほどの倍率ではありません。
中国ビジネスに関われる場を求めて[就職活動]
短期のMBA ですので、就職活動については入学当初から考えていました。元々はグローバルに展開する日系企業の海外ポジションを狙う予定でしたが、徐々に中国に残りたい気持ちが強くなりました。
中国人の知人の紹介で中国企業2 社の面接を受け、1 社は不合格、1社は合格。日系の人材紹介会社を介して外資系企業の中国拠点へのオファーもいただきました。しかしいずれも基本的に日本市場のみを相手にする仕事だったため、最終的にはお断りしました。学校に紹介された外資系の案件はネイティブレベルの中国語力が求められ不合格。私が希望した中国ビジネスの経験が積めるポジションは、MBA の空き時間で勉強しただけのレベルの中国語力では難しいと感じました。
それから日本の紹介会社ともコンタクトを取り始めました。7 月に長江商学院と一橋大学MBA の共催で開かれた「日中CEO ラウンドテーブル」というイベントに合わせて帰国し、5 日間で10 社面接を受けました。中国に戻ってからは夏休みにSkype で2 次面接以降の選考。その結果、秋頃に現在の職場への入社を決めました。入社後すぐにグローバルなプロジェクトに参加できることと、中国で急速に事業拡大しており将来的に中国でのビジネスに関わる機会もあると考えたことが理由です。
企業と人の出会いも縁です。中国は特に人の縁で始まる話が多いので、在学中からネットワークを広げて活動することをお勧めします。
中国にどっぷり浸れる満足度高いMBA
長江商学院の教育のクオリティには概ね満足しています。教授による講義だけでなく、部外講師を招いてのセミナーや、卒業生との懇親会、インターン、米国研修等々、さまざまな学びのチャンスがあります。1学年1 クラスで人数も多くないため、全員がすぐに仲良くなり遊びや旅行に一緒に行く機会もたくさんあります。中国はまだ日本に比べ物価も安く、慣れれば比較的安価に生活でき、居心地も良いです。
注意点は、良くも悪くも「中国どっぷり」のMBA であることです。講義ではもちろんグローバルなコンテンツを英語で学びますが、任意参加のイベントではある程度の中国語力が求められる場合があります(卒業生との懇親会で英語が苦手な方と話すなど)。また学校でも私生活でも、常に中国人に囲まれた時間を過ごすことになりますので、文化的に合わない方には向かないでしょう。
未来のアジアMBA 生への応援メッセージ
卒業後は東京を拠点に仕事をしていますが、中国関連のニュースを目にしない日はありません。直接関わるプロジェクトでも、上海や深センをはじめ中国各地のサプライヤーと連携して動く仕事が増えました。私の仕事はITですが、フィンテックやAIの分野では中国から先進事例を学ぶという場面も出てきています。生産拠点から一大消費マーケットへ、そして研究開発の拠点へと、中国の役割も急速に広がりつつあるように感じます。
長江での1年間は、その変化の兆しを内側から目の当たりにし、人脈形成の足掛かりを築くことができた貴重な経験でした。同級生や卒業生との交流は今でも続いています。志を同じくする皆さんがこの輪に加わる日を楽しみにしています。ぜひ、頑張ってください!
<参考>留学費用
※奨学金の額は学校との取り決めにより非公開
※在学当時の留学費用概算、為替は2019年2月現在のものを使用