MBAの学位を取得したいけれども、会社を辞めてまで行くのはリスクが高くないだろうか?今のキャリアも中断したくないが、MBAも学びたい、そんな悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。MBAはフルタイムだけではなく、平日夜または週末のみの通学で取得できるパートタイムという形式のプログラムもあります。
今回は、そのパートタイム形式のMBAの中でも通学は月2回、最短15ケ月で、アジア・香港にいながら米国MBAの学位が取得できるプログラム“University of Iowa Hong Kong MBA Program”を現在同プログラムに在籍中の須藤さんにご紹介頂きます。
須藤 将司(すどうまさし)
台湾・台北在住。ジェトロで7年間勤務後、台北に渡る。その後台湾系食品メーカーにて国際業務に携わり、現在は米国系コンピュータ関連機器製造メーカーの日本セールスマネジャーに従事。月2回のペースで香港に通い、University of Iowa Hong Kong MBA Program在学中。
University of Iowa Hong Kong MBA Programとは?
University of Iowaは米国アイオワ州アイオワシティに本拠を置く州立大学です。Tippie of College of BusinessのMBAプログラムは2017年に全米の他大学に先駆けてFull Time課程を廃止したこともあり、なかなか知名度が低いのが現状ですが、最後の2017年度のFinancial Times発表のランキングで世界84位、過去3年のランキングでも平均80位をキープするなどの実績を残しており、「隠れた名門校」と言っても過言ではありません。
私が現在通っているHong Kong MBA programは同校が運営する※Part Time MBAプログラムであり、毎月2回の週末だけのスクーリングで最短15カ月で米国本校と同じMBA学位を取得できます。教授は全て、授業のたびにアイオワシティの本キャンパスから渡航しており、オンラインでの授業が全くないことも大きな特徴です。学費も教材を含めて25万香港ドルと、一般的な米国のMBAプログラムよりもリーズナブルな設定になっています。
※プログラムの細かい運営は大学当局でなく大学側がThe Hong Kong Management Association(HKMA)というNPO団体に委託して行っています。詳細はこちら
最短の準備期間、かつキャリアも中断せず通える国際色豊かなMBA(選んだ理由)
私は学校を選ぶ際、以下5つのポイントを重視していました。
- 現在のキャリアを中断せずにMBAを取得すること。
- EMBAではなく、MBAであること。
- 授業はオンライン型式ではなく、全てスクーリング形式で進められること(台北から物理的に通えること)。
- MBA課程の知名度が世界的に高い学校であること。
- 学生のバックグラウンド・国籍ができるだけ多様であること。
これら5つの条件をクリアする学校の中で、私にとってベストな選択がUniversity of Iowaでした。
台湾ではそもそもPart Time MBA自体があまりメジャーではなく、フルタイムのMBA(もしくはGlobal MBA)もしくはEMBAが主要な選択肢となります。また、MBA課程のランキングも総じて高くはありません(私の認識では、100位以内に継続的にランクインする大学は台湾にはありません。GMBA以外は授業は基本的に中国語で行われ、学生も台湾人がほとんどという印象です)。
渡航費と宿泊費は確かにかかるのですが、台北と香港との飛行機のチケットは往復で1,000香港ドル程度、香港での宿泊費もホステルを利用することで1泊200香港ドル以下にまでしぼることができます。前述した通り授業料もリーズナブル(25万香港ドル)なので、渡航費や宿泊費を加味しても、かなり良いコストパフォーマンスで世界的に認知された米国の大学のMBAを取得することができるのではないかと考えました。
また、University of Iowa Hong Kong MBA Programは毎月入学が可能なため入学後すぐに授業に参加できること、入学時にTOEFLやGMATの点数開示も原則として求められないので、入学までの準備期間を大幅に短縮できること、そしてオンライン授業を一切排除していることも大きな魅力でした。
TOEFL & GMATの提出必要なし!その分CV、エッセイ、インタビューは念入りに準備を!(受験科目/アプリケーション)
入学にあたって必要な資料は基本的にCVとエッセイ、そして2通の推薦状のみといたってシンプルです。資料提出後はアイオワシティ本キャンパスの担当スタッフとの電話インタビューを経て、1週間から2週間程度で入学通知が届きます。
入学にあたって特に大きな苦労はしていませんが、あえて挙げるならばオンライン上でも学校のホームページ以外にコースに関わる情報がほぼないので、自力で学校側に連絡を取ったりコースの卒業生を探すなどして、情報を取っていかなければならないことぐらいです。私の場合はFacebookで本コースの卒業生を探し出し、強引にプライベートメッセージでコースの内容やクラスの雰囲気等について質問しました。
また逆に言えばTOEFLやGMATが必要ない分、エッセイ等のその他の提出資料、および電話インタビューでの受け答えが重視されます。インタビューでは私の場合特に突飛な質問はされませんでしたが、基本的な質問事項についてははっきりと自信をもって答えられるよう、十分な準備が必要でしょう。
私が質問を受けた項目は以下の通りです。
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- 自己紹介
- 志望動機、特になぜアイオワ大のプログラムに出願したのか
- 日常業務を行う中で特に心がけていることは何か
- なぜ日本を離れ台湾に海外転職したのか
- 卒業後どのような進路を考えているか
プログラム全体スケジュール
毎月連続する週末に2回、計4日間(30時間)の授業で1つの科目を履修することになります。卒業には6つの必修科目と9つの選択科目で全てC以上の成績を取る必要があります。
土曜の授業は14時から20時まで、日曜は9時から18時までなので、台北から通いで通っている私は土曜の朝に出発して日曜の授業後に台北に戻り、月曜朝に出勤するという生活を送っています。
<基本的な月間スケジュール例>
コース内容は本キャンパスで3か月(12コマ)かけて学習する内容を単に30時間に凝縮しているだけ※1なので、授業前・授業中(および授業のある2つの週末の間の時期)・授業後ともにかなりの量の課題が与えられます※2。これをいかに自分の仕事と両立させるかが大きなカギとなります。
なお、クラスの人数が少ない(15人程度)ため、授業で指名される確率も高く、グループワークでも1人あたりのコミットメントが高く求められるので、いわゆる「Free Rider」になる余地がないのも特徴です。
※1:教授によっては、アジア圏の会社のケースなどを入れるなどし、内容を再編成している場合もあります。
※2:<基本的な月間スケジュール例>参考。
超少人数クラスのメリット&デメリット
2019年6月現在ではクラスメイトは18人います。構成は以下の通りです。
- 国別:香港6名、中国3名、台湾3名、米国・ロシア・マレーシア・ニュージーランド・マカオ・日本各1名
- 性別:男子12名、女子6名
- 年齢層:最年少24歳、最高齢40代前半。基本的には30代前半がほとんどです※。
- バックグラウンド:18人全員が定職を持っていますが、業種や職種は様々です。
サービス業が7名(IT(バックオフィス)2名・金融2名・航空サービス・統合リゾート・品質検査サービス)、システムエンジニアが4名、個人事業主が4名(幼児教育・健康食品卸売・アパレル卸売・ダンス講師)、製造業関連が3名(アパレル・製薬・コンピュータ機器製造業)です。
※全員のクラスメイトの年齢を正確に把握しているわけではありません。あくまで私の把握している範囲内での状況です。
◆メリット
否が応でも生徒1人1人の授業に対するContributionが求められ、Free rideが許されない環境が自然に出来上がる。そのため生徒同士の結束が特に強まります。
◆デメリット
一方で、MBAプログラムを通して、人脈・ネットワークを特に広げたいという方には、超少人数制のコースは不向きかもしれません。
しかし、私たちのHong Kong MBA programの場合は、卒業生が頻繁にクラスに遊びに来たり、授業後の交流会に顔を出したりするので、そこで在校生以外のつながりを作ることができます。また、一部の授業モジュールをUniversity of Iowaがイタリアで展開するMBAプログラム・CIMBA※で履修できるため、そこでアジアでは経験できない知見を獲得したり、新しい人脈を広げる在校生も少なくありません。
また、台湾では卒業生・在校生のLINEグループがあり、食事会やイベント(マラソン大会団体参加など)が不定期で行われます。
※約1週間程度の滞在で1つ分の授業モジュールを履修することが可能。宿泊費(学生寮)と渡航費は別途必要だが、授業料の追加料金も必要ない。
印象に残っている授業
1) Marketing Management
中国出身のAlice Wang教授の「Marketing Management」はハードながらも一番得るところの大きかった授業でした。
授業ではマーケティングの概論についての講義があるのと同時に、「『孤独』を解決する商品/サービスをプロデュースせよ」というテーマのもと、3人1組のグループに分かれて1週間というタイムリミットの中でプレゼンと企画書作成を行います。
商品/サービス設定・SWOT分析・ブランディング・競合品分析・ターゲットの設定・価格設定・商品プロモーション計画・収支計画などの策定を行う中で、「自分たちの勝手な思い込み」はないか、「論理の飛躍」はないかをチームメンバーや教授とともにストイックに考える中で、モノやサービスを売る戦略を作るうえで考えなければいけないポイントを自分自身の身をもって学ぶことができます。ちなみに、私たちのグループがプロデュースしたのは「北米圏のシングルマザー家庭で育つ幼児・学童を対象としたバーチャルホームロボット」でした。
2) Law and Ethics
Nancy Hauserman教授の「Law and Ethics」は、利潤の最大化を図るうえで陥りがちなコンプライアンスや倫理的問題について考える授業です。
「偶然入ったカフェで自分の会社の競合先に勤めている社員が隣に座り、機密文書をおおっぴらに机に広げたまま席を立った場合、あなたはどうするか」というテーマでディベートを行った際、「席を立って書類の写真を撮る。機密を守るのは個々人の責任であるし、目に入ってしまったものは仕方がない。」という意見がある一定数のクラスメイトの支持を得たのには衝撃を受けました。
日本で当たり前とされている倫理観や価値観の物差しが、一歩国外に出ると必ずしも普遍的ではないということを再認識しました。ちなみに私は「わざわざ指摘するのも気まずいので、あえて見て見ぬふりをする」という意見を発表。その他「そっと書類を裏返しにして、本人が席に戻ったら指摘する」などの意見もあり、議論が大いに盛り上がりました。
ここが我が校の自慢!
週末だけのスクーリングで、世界ランキングトップ100位以内に入るMBAの学位が取得できることが大きなポイントです。また、TOEFLやGMATの提出が不要なので、スコアメイキングにかかる時間と費用を大幅に短縮することができます。
どんな人がこの学校、このプログラムに向いているか
月に2回、香港へ「通い」で通学する必要があるため、駐在や海外就職で香港またはその近辺地域に在住していることが大きな条件になるかと考えます。そのうえでキャリアを中断することなく、次なるキャリアに向けて仲間とともに切磋琢磨したいという目的意識があるのであれば、私の通っているHong Kong MBA programはとてもいい選択肢ではないかと考えます。
学校側が授業以外のサービスを積極的に提供することが少なく、基本的に「何かリクエストがあればできる限りそれに応える」というスタンスを取っているため、ただ単に受け身で授業を受けるような姿勢は禁物です。
教授もスタッフの方も何か問題やリクエストがあればすぐに解決に動いてくれるので、自分でしっかり目的意識を持ち、今の自分に何が足りていないか、具体的にどのような解決方法を望んでいるかをしっかり伝え、交渉する姿勢が必要です。
未来のアジアMBA生に向けての応援メッセージ
20代後半から30代前半にかけてのこの時期は、一般的に社会人としてキャリアを歩み始めて5年から7年以上がたち、早い人では駐在ポストがまわってきたり、また将来のキャリアを考えるうえで漠然と海外に目を向ける方も多いかと思います。
様々な情報が行きかう中、自身の進むべき道を決めるのはたいへん難しいかとは思いますが、地理的条件が許すのであれば、金銭的コストとキャリアをいったん中断するリスクをできるだけ低くした「アジアでPart Time MBA」という選択肢もありなのではないかと考えます。まだ私も仕事とMBAとの両立で奮闘している毎日ですが、今後アジア地域で活躍する人材になりたいと考えているみなさんにとって、ここで得た知識と仲間は、現在の会社に残る残らざるにかかわらず、一生の財産になること請け合いです。
プロフィール
名前 : 須藤 将司 Sudo Masashi
MBA : University of Iowa Tippie College of Business Hong Kong MBA program(2020年6月卒業予定)
職歴 : (現職)CORSAIR Components Inc(米国系コンピュータ関連機器製造メーカー)、 Japan E-tail Sales Manager
(MBA 前)ジェトロ(日本貿易振興機構)に約7年間在籍。退職後単身台湾に渡り台湾系食品メーカーの国際業務部で約2年間勤務したのちに現職。
留学方法 : 私費、単身
海外経験 : 現在台湾・台北に在住
IELTS: Overall 7.0 (L7.0/ R8.0/ S6.5/ W6.5)※
※入学にあたってTOEFL/IELTSやGMAT/GREの提出は求められてはいませんが、私の場合は自分の英語力の裏付けになると思い、自主的にスコアを提出しました。
GMAT : 受験せず
※本プログラムは2021年をもって終了しています、詳細はこちらをご覧ください(2021年8月追記)